| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-061 (Poster presentation)
環境省レッドリスト2025において絶滅危惧種ⅠB類に指定されているイワテヤマナシ(Pyrus ussuriensis var. aromatica)は、自家不和合性を示しニホンナシと容易に交雑する。このためイワテヤマナシの遺伝的に純粋な集団は岩手県盛岡市の一部地域に限られる。これまでの調査で純粋集団の更新不良が判明しており、保全が急務とされているものの保全に必要な情報は不十分である。本研究では、イワテヤマナシ集団の分布特性の解明を目的とし、踏査で得られた在不在データと地形や水環境、林内環境に関連する環境変数を用いた種分布モデルを構築した。
イワテヤマナシ個体の在不在データは、あらかじめ設定した50m、100m、200mの空間スケールに基づき間引きを行った。MaxEnt、GLMによる種分布モデル構築の結果、複数のモデルで共通して、斜度が緩いほど、河川との距離が近いほど、積雪深が深いほど生息適性度・出現確率が高くなる傾向が見られ、分布特性の一つとして湿潤環境が適していることが示唆された。また、積雪深が深いほど、標高が低いほど、南西向きの斜面に面しているほど生息適性度・出現確率が高くなる傾向から、温暖で低温ストレスを回避しやすい環境ほど分布しやすいことが示唆された。これらの結果は、他の調査・研究から明らかになった、種子散布様式による散布環境の制限や、実生の成長における湿潤環境の要求と一致した。空間スケールごとのモデル精度を比較したところ、50mメッシュのモデルが識別精度において最も優れ、100mメッシュのモデルにおいて在データの見落としが最も少なかった。これらの結果からMaxEntの種分布予測において生息適性度が高い箇所且つGLMにおいて出現確率が高いとされた環境条件の場所を踏査することが新規個体を見つけるために有効であると考えられる。