| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-065 (Poster presentation)
シカによる過採食は植物の多様性の低下を引き起こす。従来の防鹿柵による植生の保護は、設置にコストがかかり、長期的な過採食下では植物の回復が見られない場合があるため、新たな保全策が必要である。本研究は、これまで着目されてこなかった倒木のレフュージアとしての機能に着目し、(1)倒木上では地表に比べて植物の多様性が高いか、(2)倒木のどのような特性が植物の多様性に影響するのかを解析した。
調査は京都大学芦生研究林の老齢冷温帯針広混交林で実施した。調査範囲の由良川流路から2m以内の全倒木72本を対象に、倒木上および近接する地表に20×60cmのプロットを計370個設置した。2025年7月と10月にプロット内の維管束植物の種と被度を記録し、倒木特性として倒木の直径、高さ、角度、腐朽度、腐朽型、コケの被度を測定した。まず、倒木上と地表の植物群集について、種数と多様度指数をGLMMおよびLMMで、群集組成をNMDSとNested PERMANOVAでそれぞれ比較した。その後、倒木上の植物の多様性に影響を与える倒木特性をLMMのモデル選択で評価した。
84種が確認され、うち26種(レッドリスト種3種を含む)は倒木上のみに出現した。(1)倒木上と地表では種数に有意差はなかったが、多様度指数は倒木上で高く、倒木上では均等度の高い群集が形成されていた。群集組成も倒木上と地表で異なり、嗜好性種の被度は倒木上で高く、不嗜好性種の被度は地表で高かった。(2)倒木特性では、倒木の高さと腐朽度が高くなるほど、種数、シャノン多様度指数、嗜好性植物の被度が増加した。嗜好性植物数が地表より多い倒木は72本中42本で、調査範囲全体に広く分布していた。以上より、シカの過採食下において、倒木は地表とは異なる植物群集を成立させ、嗜好性植物を含む多様な維管束植物の生育を支えるレフュージアとして機能していることが明らかとなった。