| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-066 (Poster presentation)
滋賀県の環境保全型水田で栽培された環境こだわり農産物は「生態系保全・景観形成」という観点において「除草剤を使用しないほ場周辺除草」として草刈り機による畦畔管理が定められている。しかし、生態系保全に関する具体的な管理回数や時期は曖昧であり、農作者ごとで様々である。本研究では水稲栽培において、畦畔の草刈りが斑点米カメムシ・クモ類に与える影響を明らかにし、害虫制御・天敵増加の観点から効果的な管理手法の検討を目指した。
高島市新旭町の3名の耕作者による25枚の水稲栽培圃場の畦畔を対象に、スイーピングによってクモ類と斑点米カメムシ類の採集を行った。また、草丈調査は0.5m×0.5mのコドラートを設定し、四隅で最も草丈の高い植物を測定し平均値を求めた。垂直投影したイネ科植物の被度についても、同様のコドラートを用いて測定し割合を求めた。採集されたクモ類は科レベルで分類し、アシナガグモ科とカニグモ科の個体数を応答変数、草丈、月、連続した森林からの距離などを説明変数、調査地をランダム効果としてGLMM解析を行った。
12枚の調査地のサンプルから、クモ類が1736個体、カメムシ類が103個体採集された。このうち、クモ類ではアシナガグモ科が827個体、カニグモ科が286個体採集された。アシナガグモ科とカニグモ科に共通して草丈が個体数に正の影響を与えた。カニグモ科のみ、森林からの距離が個体数に正の影響を与えた。よって、クモ類の生物多様性保全を目指すには、畦畔内の草丈を高く維持することでクモ類の個体数を維持し、環境保全型農業に求められる生態系保全に寄与できる可能性がある。しかし、一様に草刈りを行うのではなく森林からの距離など水田の周辺環境を考慮した上で、施策する必要があると考えらえた。