| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-068  (Poster presentation)

核ゲノムSNP情報に基づくシマドジョウ属絶滅危惧種の保全遺伝学的評価【A】
Conservation genetic assessment of endangered loaches (genus Cobitis) based on nuclear genome-wide SNP data【A】

*三内悠吾(京大院理), 高田喜光(京大院理), 中島淳(福岡県保環研), 三品達平(九大院農), 田畑諒一(琵琶博), 斉藤憲治(水生生物保全協会), 渡辺勝敏(京大院理)
*Yugo MIUCHI(Kyoto Univ.), Yoshimitsu TAKADA(Kyoto Univ.), Jun NAKAJIMA(Fukuoka IHES), Tappei MISHINA(Kyushu Univ.), Ryoichi TABATA(Lake Biwa Museum), Kenji SAITOH(ALCS), Katsutoshi WATANABE(Kyoto Univ.)

日本に分布するシマドジョウ属魚類Cobitisは、14種8亜種の全てが国または地方自治体のレッドリスト等で希少種に選定されている。また、限られた地域にのみ分布する種・亜種が複数知られ、最も絶滅の危機に瀕している淡水魚類の一つである。本発表では、シマドジョウ属魚類においてMIG-seq法によるゲノムワイドSNPデータを用い、遺伝的集団構造解析や遺伝的分化指数FSTによる保全単位の検討、および近親交配などに関する遺伝学的指標による保全遺伝学的評価を行った。サンプルとして全14種8亜種について全国240地点から収集した1070個体を用いた。Neighbor-netやAdmixture解析による遺伝的集団構造解析の結果、種間や亜種間での遺伝的分化が支持され、さらに同種内に遺伝的に分化を遂げた複数の地域集団も認められた。また、種間で異なる遺伝的分化パターンがみられ、広域にわたって遺伝的集団構造をもたない種と、地域や水系ごとに細分化される種が見いだされた。この結果は、同じシマドジョウ属魚類であっても保全単位となりうる地域スケールが種間で異なることを示す。集団の近親交配の程度を表す近交係数FISは、広域に分布する種・亜種よりも狭い分布域をもつ固有種・亜種で相対的に高い値を示し、博多湾周辺に固有のハカタスジシマドジョウ、山陽地方に固有のサンヨウコガタスジシマドジョウの一部地点で特に高い値を示した。この2亜種は分布域が狭いことによる潜在的な絶滅リスクに加え、都市周辺にのみ分布することから、生息地の破壊による個体数の減少に直面しているものと考えられる。本研究の結果を踏まえ、シマドジョウ属各種において地域集団レベルの保全単位を設定し、特に分布域の狭い保全単位については優先的に保全策を講じる必要性がある。


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