| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-071  (Poster presentation)

北海道釧路沖へのシャチ(Orcinus orca)の来遊がカレイ漁被害に繋がっているのか【A】
Is the presence of killer whales(Orcinus orca) off Kushiro, Hokkaido, linked to damage in the flatfish fishery?【A】

*大野円花(京都大学), 鈴木百夏(京都大学), 嶋田宏(道総研釧路水試), 櫻木雄太(京都大学), 三谷曜子(京都大学)
*Madoka ONO(Kyoto Univ.), Momoka SUZUKI(Kyoto Univ.), Hiroshi SHIMADA(Kushiro Fisheries Res. Inst.), Yuta SAKURAGI(Kyoto Univ.), Yoko MITANI(Kyoto Univ.)

近年,北海道東部では,ババガレイ(Microstomus achne)を主対象とする底刺し網漁業
においてシャチ(Orcinus orca)による被害が報告されている。しかし,シャチによる被
害が複数海域で生じているのか,特定の群れによる被害なのかは分かっていない。この点
を明らかにすることは,被害実態を理解し,今後の管理や共存策を検討する上で重要であ
る。本研究では,北海道東部に出現するシャチを対象として,調査船による目視調査およ
び写真記録を中心に,個体別の出現状況を整理することを目的とした。あわせて,それら
の出現がババガレイ底刺し網漁業の操業時期および漁場とどのように重なっているのかを
検討した。
目視調査は2023–2025年の9–12月に実施し,個体識別写真を撮影し,既存の個体識別資料
との照合を行った。さらに,漁業者への聞き取り調査により,シャチ出現に関する情報を
収集した。加えて,漁獲統計については,2008–2023年の年別漁獲量を整理し,シャチの
出現が漁業者に認識されるようになった2010年前後の状況を確認した。
目視調査によって漁業海域周辺でシャチが観察された。また個体識別の結果,一部個体は
過去に同海域および羅臼海域で確認された個体と一致し,特定の群れが繰り返し漁場に来
遊していることが示唆された。漁獲量は年変動が大きく,2010年を境に変化が生じている
傾向は認められなかった。また、聞き取り調査では,ババガレイ漁期に漁場周辺でシャチ
が確認されるとの情報が複数の漁協から得られた。目視調査でも被害のある時期・漁場で
シャチが確認された。本研究より,釧路沖において複数年にわたり同一個体が再確認され
ることが明らかとなり,特定個体が継続的に本海域を利用している可能性が示された。こ
のような出現の継続性を把握し,漁業との関係を検討していくために,今後も継続的な調
査を実施する必要がある。


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