| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-078 (Poster presentation)
都市化は野生動物の生息地を改変し、行動や生理に影響を与えてきた。これまでの研究は主にストレス反応に着目してきたが、他の生理指標も検討する必要がある。都市環境では資源競争や攻撃的な相互作用が増加しており、これらに関連する性ホルモンであるテストステロンにも変化が生じている可能性がある。しかし、都市環境におけるテストステロン濃度を調べた研究は限られている。そこで本研究では、都市と郊外に生息するキタリスのテストステロン濃度を比較し、都市化が性ホルモンに及ぼす影響を調査した。調査は2022年と2023年に北海道帯広市で行い、捕獲個体から採取した体毛からテストステロン濃度を測定した。オスとメスのそれぞれについて、線形混合効果モデルを用いて、生息地(都市・郊外)および季節の主効果と、その交互作用がテストステロン濃度に与える影響を検討した。また、栄養状態を考慮するため、栄養状態指標(BCI)を共変量とした。オスについては、生息地と季節、加えてこれらの交互作用がテストステロン濃度に影響していた。そのため、Tukeyの多重比較による追加解析を行った結果、郊外においては春より秋のほうがテストステロン濃度は高くなった。一方で都市のテストステロン濃度は、郊外の秋と同程度の濃度を維持し、季節性は見られなかった。メスでは生息地と季節、これらの交互作用はテストステロン濃度に影響していなかった。また、雌雄いずれもBCIはテストステロン濃度と関係していなかった。テストステロンはオス間競争に関わる精子形成や性行動、攻撃行動などの繁殖行動を調節している。都市では個体密度・競争率が高く、個体間相互作用が郊外よりも長期的に働いている可能性がある。加えて、これらの作用が主にオスに生じるため、都市のオスのテストステロン濃度に季節性がなくなったのかもしれない。今後は個体間相互作用や個体レベルでの行動とテストステロン濃度の関係を明らかにする必要がある。