| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-083 (Poster presentation)
マリゴケとは,湖底に生育するコケ類が強い波でちぎれ,湖底を回転する過程で水草片と共に球状に集積した複合体である.マリゴケはフィンランド南部やチリ南部の限られた湖でしか報告されておらず,国内では屈斜路湖や猪苗代湖が報告地となっている.マリゴケの形成には特有の波条件や水中流動,湖底地形など複数の要因が一致する必要がある.それらの条件を満たす場所は限られており,貴重な現象となっている.しかし,国内の研究例は極めて少なく,屈斜路湖では2003年の簡易調査以降,20年以上継続的な調査が行われていない.近年では,マリゴケやそれらを構成する植物の減少が問題となっている.さらに,従来主要構成種であったウカミカマゴケ(Drepanocladus fluitans (Hedw.) Warnst.)が姿を消し,代わってクロカワゴケ(Fontinalis antipyretica Hedw.)が優占している現状も懸念される.これらを踏まえ,本研究では,マリゴケとそれらの構成種の分布状況と生育環境要因との関係を明らかにすることを目的とした.湖内4地点で植生調査および水質調査を実施した. 3地点ではpH 6–7の中性環境が維持され,湖底に生育するクロカワゴケや同種により形成されたマリゴケが確認された.1地点ではpH 3–4の強い酸性環境が確認された.この酸性域では,従来主要構成種であったウカミカマゴケの群落および同種により形成されたマリゴケが確認された.酸性環境は温泉水由来の河川の流入により形成されている可能性が高い.このことより,屈斜路湖には2種類のコケで構成されたマリゴケが存在することが確認され,pHの変化がコケ類の生育に大きな影響を及ぼしていると考えられる.また,マリゴケを構成しているコケ類が生育している付近には,湧水が存在しており,コケ類と深く関係していると考えらえる.今後は,地形・底質・湧水とクロカワゴケとの関係性を調査し,構成種の保全および希少生態系の維持に寄与することを目指すことが望まれる.