| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-084  (Poster presentation)

シャープゲンゴロウモドキの保全を目的とした自然再生地が支えるトンボ目幼虫の多様性【A】
Diversity of Odonata Larvae Supported by Natural Restoration Area for Conservation of Dytiscus sharpi【A】

*内田翔, 寺尾葉奈子, 小林周平, 中島一豪, 高田まゆら, 西原昇吾(中央大学)
*Sho UCHIDA, Hanako TERAO, shuhei KOBAYASHI, kazuhide NAKAJIMA, mayura TAKADA, shogo NISHIHARA(Chuo Univ.)

日本の水田やため池は氾濫原湿地の代替として機能し、淡水生態系の生物多様性を支えてきたが、その機能は近年の耕作放棄や農薬使用、外来種の侵入等に伴う環境の悪化によって失われつつある。こうした現状に対し、失われた湿地を再生する保全活動が各地で行われている。保全の対象が地域の環境を代表するような「象徴種」である場合、その種と同ギルドに属する生物の多様性も副次的に維持される可能性がある。本研究では、絶滅危惧ⅠA類シャープゲンゴロウモドキを象徴種として、千葉県において放棄水田を湛水化し、15年以上にわたり外来種の侵入監視・根絶および定期的な水管理・植生管理が継続されている自然再生地が、同一の捕食者ギルドに属するトンボ目幼虫の多様性を維持するかを検討した。本自然再生地18ヶ所を対象にすくい取りによりトンボ目幼虫群集の多様性を調べ、その維持に重要な環境要因を特定した。
2025 年4月~10月の調査の結果、トンボ目幼虫が20種2764匹確認され、そのうち12種1910匹が県のレッドリストに記載されていた。トンボ目はイトトンボ類7種1876匹、ヤンマ類5種546匹、トンボ類8種342匹を含んでいた。これらトンボ目幼虫の潜在的な餌生物として、ケンミジンコ3776匹、フタバカゲロウ幼虫1677匹、ユスリカ幼虫1424匹等、計52種17399匹が確認された。一般化線形混合モデルによる解析の結果、イトトンボ類は季節を通して水域辺縁の植物と潜在餌量の増加に伴い個体数が増加した。ヤンマ類では夏に潜在餌量の増加に伴い個体数が増加、水温が30℃前後でも個体数が増加した。またトンボ類では初夏と秋に水深が深い場所で個体数が減少し、秋には潜在餌量の増加に伴い個体数が増加した。これらの結果から、本自然再生地で行われている外来種根絶や水管理、植生管理等はトンボ目幼虫の保全にも寄与する可能性が示唆され、その仕組みとして季節を通した水域周辺の植生及び多様な潜在餌の維持が関与していると考えられた。


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