| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-085  (Poster presentation)

アカウミガメ及びアオウミガメ産卵北限域における砂浜環境の特性について【A】
Environmental characteristics of sandy beaches at the northern limit of the breeding range of the loggerhead and green sea turtle【A】

*溝呂木舞波, 上條隆志(筑波大学)
*Manami MIZOROKI, Takashi KAMIJO(University of Tsukuba)

ウミガメ類は産卵地に固執性を持つため、産卵する砂浜を健全に維持することが保全において重要である。また、ウミガメ類は孵卵期間に経験する温度によって性比と孵化率が変化することや、海水温の上昇に伴い母ガメの上陸行動も変化することが示唆されており、現代の人為的かつ急速な気候変動に脆弱であると考えられる。
気温、海水温が急速に上昇する中で、産卵北限域は南部と比較して温度が低いことが予測され、将来的に高温からの避難地として重要性が増す可能性がある。
そこで本研究では、ウミガメ類の上陸、産卵、孵化脱出の一連の繁殖行動に影響を及ぼす要因について着目し、気候変動により上陸数が増加する可能性がある北限域の砂浜の環境特性を把握するため、アカウミガメ産卵北限域(福島県・茨城県・千葉県)およびアオウミガメ産卵北限域(伊豆諸島6島)において、砂浜規模、砂質、人工構造物、砂中温度の調査を行った。
調査の結果、伊豆諸島では砂浜の幅・奥行きともに小さい傾向がみられた。気候変動による海面上昇に伴い、将来的に奥行きはさらに減少することが予測されるため、産卵巣の沈水・流出リスクが高まると考えられた。
堤防などの人工構造物や夜間の人工光源はアカウミガメ産卵北限域の調査地で多く確認された。人工光は孵化幼体の迷走を誘発する危険性があるため、不要な街灯の撤去や低照度化が推奨される。
砂中温度(2023~2025年夏季)の測定では、アカウミガメ巣中心深度40cmで最高36.7℃、伊豆諸島のアオウミガメ巣中心60cmで最高36.0℃を記録した。最高温度は、胚発生に適していると考えられる温度帯を上回っており、気候変動による気温の上昇が北限におけるウミガメ類の繁殖にも影響を及ぼしている危険性が考えられる。
以上の課題を解消し、砂浜環境の保全・改善を図ることは、ウミガメ類並びに砂浜生態系の保全に向けた喫緊の課題である。


日本生態学会