| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-087 (Poster presentation)
水田は自然湿地に生息してきた生物群集の代替生息地としての役割を担っているが、農地の集約化や耕作放棄により、水田に依存する多くの種が減少している。稲刈り後から代かき前のごく短期間の非栽培期は、希少種を含む水田植物の主要な生育期間となっている。しかし、その期間における水田植物の分布状況やそれを規定する要因については知見が少なく、特に日本の中でも特異な気候と農事暦を持つ沖縄県の水田に関する研究は乏しい。本研究では西表島において、除草剤使用、耕作回数、圃場整備、立地について条件がそれぞれ異なる複数の水田を対象に植生調査を実施し、希少植物種の分布特性を明らかにした。植生調査は島全域の48枚の耕作水田にて非栽培期(7月、11月)に行った。その結果、48枚の水田で14種の希少植物が確認された。エナシシソクサは主に一期作水田で見られ、ホタルイ、スズメノハコベは、ミゾハコベやウリクサなどの小型一年草が高頻度で出現する二期作未整備水田と、深い水深を維持する一期作水田で確認された。また、ミスミイ、クロタマガヤツリ、ヒメシロアサザをはじめとする8種は深い水深を維持する一期作水田のみで確認された。一方、乾燥した一期作水田では、高茎多年草が特徴的に生育したが、希少種はウスゲチョウジタデ、ホウキガヤツリ、エナシシソクサの3種に限られた。深い水深を維持する一期作水田は山麓・谷間に位置し、耕作による撹乱頻度が低いうえに非栽培期においても水が供給される湿田環境であることが、多様な希少種の生育を支える要因であると考えられる。また、撹乱頻度の高い二期作水田であっても、圃場整備による過度な排水改善を避け、伝統的な水管理を継続することで、希少種の生育の場を提供できる可能性がある。