| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-089 (Poster presentation)
海洋保護区は、健全な海洋生態系を維持するための主要な保全手段として世界的に支持されており、日本においても30by30目標の達成に向けて拡大が目指されている。一方で、海洋生態系に影響を与える環境要因に対して、海洋保護区の保全効果がどれほど有効であるかは十分に検証されていない。そこで、瀬戸内海の海草藻場を対象として、環境要因の影響と海洋保護区による保全効果を検証した。
海草藻場の空間データは、2015年と2022年に環境省が実施した衛星画像による分布調査結果を用いた。海草藻場の空間データを1kmメッシュスケールに変換し、各メッシュにおける2015年から2022年までの海草藻場面積の対数変化率を計算した。環境変数は、表層海水温度、河口からの距離、開放性、化学的酸素要求量、全窒素を用いた。海洋保護区として、自然公園、自然海浜保全地区、鳥獣保護区、保護水面、沿岸水産資源開発区域の空間データを整備した。日本では海洋保護区が空間重層的に設置されているため、各メッシュの海洋保護区の数を計算し、変数に追加した。最後に、統計モデルを用いて、海草藻場面積の対数変化率における、外的な環境要因の影響と海洋保護区の効果を検証した。
統計モデルの結果、表層海水温度、開放性、全窒素、海洋保護区の数に有意性が検出され、表層海水温度は負の影響、開放性、全窒素、海洋保護区は正の影響を与えていた。モデルの標準化回帰係数を比較したところ、環境要因である表層海水温度、開放性、全窒素の絶対値が相対的に大きかった。
本研究では、表層海水温度と全窒素の影響が相対的に大きく、海洋保護区による保全に限界があることが示された。これらの環境要因は、気候変動や陸域での人間活動に影響されるため、海洋保護区内でコントロールすることが困難である。したがって、気候変動による分布の変化に応じた海洋保護区の新設や計画変更、陸域の人間活動も考慮した沿岸域の総合的管理との連携が求められる。