| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-093 (Poster presentation)
富士山火山荒原におけるフジアザミ頭花の食害状況と繁殖への影響
桂川拓也・大崎壮巳・吉竹晋平
富士山火山荒原で見られる一次遷移において、パイオニア植物として生態学的・文化的に重要な役割を担うフジアザミ(Cirsium purpuratum)を対象に、近年確認される頭花消失の原因究明と、それがフジアザミの種子繁殖に及ぼす影響を調査した。
本研究では富士山南東側斜面の御殿場口および須走口を調査地とし、モーションカメラを用いた頭花消失原因の特定、現地植生調査による食害率および当年生実生の定着状況の把握を行った。
カメラ調査の結果、ニホンジカおよびニホンノウサギによるフジアザミの葉の食害が確認された。頭花が消失している花茎の現地観察結果も合わせると、動物は直接頭花を摂食するのではなく、花茎上部の花頭直下部を摂食し、これにより頭花が落下していると考えられた。
動物による食害率(全花茎の数に対する食害にあった花茎の割合)は、人工物(駐車場・茶屋)エリア比べて非人工物エリア(裸地・草原・林縁)で著しく高く、11月には約75~85%に達した。また、登山者数が減少する9月から11月にかけて食害率が上昇する傾向が確認された。これは、開山期間中や冬季の山道閉鎖前の活発な人間活動が野生動物に対する忌避要因として機能し、動物の摂食行動を抑制していることを示唆している。
食害率が低かった人工物周辺エリアでは、種子から発芽した当年生実生が多く確認されたのに対し、食害率が高かった非人工物エリアではほとんど確認できなかった。これは、食害によってフジアザミの種子生産・散布が阻害され、繁殖成功率が危機的な状況にあることを示している。
以上の結果から、富士山火山荒原におけるフジアザミは、シカ等の大型草食動物の食害によって頭花が落下することで、繁殖機会を喪失しており、その種子繁殖が大きく制限され、存続に大きな影響があると考えられる。