| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-096 (Poster presentation)
植物プランクトンは水圏生態系における主要な一次生産者であり、その生物量や種組成は湖沼環境を強く反映する。多くの先行研究により、植物プランクトン群集が、緯度といった地理条件や集水域の土地利用、湖水の栄養状態といった複合的な環境要因に影響されることが指摘されている。しかし、これらの要因が植物プランクトンの多様性にそれぞれどの程度寄与するのかは明らかでない。
そこで、本研究では、日本各地に点在する102のダム湖を対象に、植物プランクトンの生物量および種多様性を決定する要因と、それらの相対的重要性を評価した。具体的には地理(緯度・経度・標高)、水文(ダム容積・回転率)、栄養塩(全窒素・全リン)、土地利用(森林・草原・田畑・市街地)を説明変数、生物量(chlorophyll-a量)とShannon多様度指数を目的変数としたGAMMと分散分割により、各要因の相対的な影響の大きさを解析した。その結果、生物量は主に水質条件と土地利用によって規定されており(46.7%)、集水域に占める市街地や田畑の面積が小さく森林面積が大きいほど減少し、全リン濃度の上昇に伴い増加していた。このことから、集水域の土地利用の違いが栄養塩の流入パターンを変化させ、生物量を規定することが示唆された。一方、Shannon多様度指数は、沖縄および北海道のダム湖で高く、本州のダム湖で低い傾向を示し、主として地理条件により規定され、次いで集水域の土地利用の影響を受けていた(29.2%)。なお、種多様性に対する集水域の影響については、生物量と異なり、市街地・田畑面積が大きく森林面積が小さいほど高かった。これらの結果から、植物プランクトンの生物量は集水域の被覆・土地利用やそれに伴う栄養塩負荷量などの局所要因に、一方、植物プランクトンの種多様性は地理条件などより広域的な要因にも強く影響されることが示された。