| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-097 (Poster presentation)
海水・湖水・河川水などを対象とした環境DNA分析は、水中に含まれる生物由来のDNA
から非破壊的に周囲の生物の情報を得られる手法であり、生物多様性評価への応用が進ん
でいる。しかし、陸上植物への適用や遺伝的多様性の評価への応用は限定的で、サンプリ
ングの時空間的な違いの影響にも未知の部分が多い。そこで本研究では、森林内河川の環
境DNA分析によって森林内の優占樹種の種・遺伝的多様性を評価することを目指し、環
境MIG-seq(eMIG-seq)法による実証データの取得を行った。
まず屋内操作実験として、ガラス瓶内に水とブナ葉片1~555個体分を段階的に入れ、系
内の異なる多様性を模した模擬河川水を作製した。また、使用した555個体分のブナ葉片
からは別途直接DNAを抽出した。次にフィールドでの実証データ用材料として、宮城県
内の冷温帯落葉広葉樹林を流れる河川の源流部において約1kmの間隔で7地点を設定し、
河川水から環境DNAを春から秋にかけて採取した。
これらの試料について、それぞれMIG-seq2法により遺伝的多様性データを取得した。ま
た、河川水の試料からは種多様性データも取得した。さらに、ブナ葉片DNAデータから
環境DNA分析用の参照配列を作製した。
模擬河川水のDNA分析からは、瓶中に投入したブナの葉の個体数に応じた多様性の指標
値が検出された。フィールドで試料を用いた解析では、異なる地点の集水域内におけるブ
ナの分布個体数に対応する遺伝的多様性や、優占樹種の種多様性の違いを検出できるかを
検討した。
本研究で開発したeMIG-seq法は、森林河川を対象とした植物の環境DNAモニタリング
をより省力化する可能性を示唆するだけでなく、環境DNA分析の応用範囲を劇的に拡大
させる可能性を示すものである。