| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-099  (Poster presentation)

隠岐島後におけるモグラ2種の共存機構【A】
Mechanisms of coexistence in two mole species in Oki-Dogo island.【A】

*山澤泰, 横畑泰志(富山大学)
*Tai YAMASAWA, Yasushi YOKOHATA(University of Toyama)

種の分布の決定要因を特定することは、その地域における種の共存や多様性維持の機構を理解する上で重要である。コウベモグラとアズマモグラ(以降、コウベとアズマ)は種間競争の関係にあり、それぞれ西日本と東日本に広く分布するが、コウベの排除を逃れたアズマの小規模隔離分布域が、西日本の山岳地や島嶼に点在する。こうした分布は、先に大陸から日本に進入したアズマの分布域を、後から進入した大型種コウベが競争排除によって東方へ徐々に縮小させた結果と考えられている。隔離分布域の維持には、崖などの急傾斜地形や土壌環境が関わると経験的に知られているが、定量的な調査による実証研究はなされていない。そこで、両種が共存する隠岐島後において、①両種の分布を明らかにし、②種間競争を考慮したモデルを用いて、分布を決める景観と微小環境を特定することで、両種の共存機構を考察した。
島全域にて痕跡・捕獲調査を行ったところ、コウベは低地に、アズマは島の北東部に主に分布していた。両種の出現に対する景観の効果を分析したところ、コウベは農地よりも森林で出現確率が下がり、アズマは標高が高い場所、または変成岩類が存在する場所で出現確率が高く予測された。次に分布境界付近にて土壌特性を定量化し、両種の出現に対する微小環境の効果を分析したところ、比較的大きな礫の量や露岩率の増加がコウベの出現確率を低下させた。また、景観と微小環境いずれの分析でも、アズマの出現確率はコウベの存在によってのみ低下した。礫分率は標高が高い、または変成岩類が存在する場所で高く、微小環境の勾配が両種に対する景観の効果を説明した。以上から、両種にとって好適な生息環境である均質な低地土壌ではコウベがアズマを排除するが、コウベが生息できる土壌条件の幅はアズマより狭く、地質や標高と関連した土壌中の礫や石の増加がコウベの分布拡大が阻むことで、両種の共存が成り立つと考えられた。


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