| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-101 (Poster presentation)
森林植物相の効率的なモニタリング手法の確立に向け、流域植生を反映すると考えられる河川水中の植物環境DNA(河川植物eDNA)の時間的代表性および粒径依存性を検証した。新潟大学佐渡演習林内の大倉川上流部において、2025年9月に45秒間隔で2 L×24本の連続採水を行い、200、50、5、0.2 µmの孔径フィルターを用いて段階濾過を実施した。0.2-5 µm、5-50 µm、50-200 µm画分についてITS2領域を対象にメタバーコーディング解析を行い、6月および11月(各3本、0.2-5 µmおよび5-50 µm画分)とも比較した。流域内の背景植生として、2024年に実施したベルトトランセクト調査(20 m×50 m、4本)の結果を用いた。
9月の24連続採水では、低頻度配列には入れ替わりがみられたものの、相対優占属は多くのサンプルで検出され、主要構成種は維持されていた。とくに5-50 µm画分では上位属の大部分がほぼ全サンプルで確認され、9月に検出された植物属のうち約9割が本画分で検出された。一方、50-200 µmまたは0.2-5 µm画分のみで検出された属は少数にとどまった。
さらに50-200 µmおよび5-50 µm画分では、高木層および亜高木層種の検出割合が背景植生に対して相対的に高く、木本層由来のシグナルが多く含まれる傾向が認められた。6月および11月では、9月の採水では検出されなかった属が一定数確認され、河川植物eDNAが流域植生のフェノロジーや生育段階と関連する可能性が示唆された。
以上より、河川植物eDNAは短時間では安定しつつも季節スケールで変動を示し、その多くが5-50 µm画分に存在したことから、植物組織片や細胞由来粒子が主要な担体である可能性が示された。とくに50-200 µmおよび5-50 µm画分は流域木本層を反映しやすい傾向が認められた。ただし、河川植物eDNAが流域内のどの空間スケールの植生を主に反映しているかは明らかでなく、流入経路を含めた検証が今後の課題である。