| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-102 (Poster presentation)
生物多様性の損失には、土地利用の変化や気候変動をはじめとする人間活動が大きく関与している。わが国では、人口減少に伴う管理放棄地の拡大や温室効果ガス排出量の削減が社会的課題となっている。生物多様性のホットスポットとして注目される里山景観では、管理放棄地の拡大が全国に先んじて進行しており、土地利用の変化が生物多様性に及ぼす影響が懸念されている。加えて、近年の気候変動は生物種の分布変化を引き起こす要因と考えられ、生物多様性保全に向けてはその影響を考慮することが重要である。しかし、土地利用の変化と気候変動を同時に組み込み、地域スケールでの生物多様性への影響を評価した研究は十分ではない。本研究では、里山景観の代表地として佐渡島を対象に、3年間、3季節ずつ取得した鳥類データを用いて、土地利用および地形条件に基づく種分布モデルを構築し、耕作放棄地の拡大を想定した将来シナリオに外挿することで、種ごとの分布変化を予測した。さらに、全国鳥類繁殖分布調査データと、30年平年値気温および標高値を用いて種ごとの生息適温帯を推定した。その結果、34科68種について種分布モデルが構築され、土地利用の変化により平地および中山間地で森林性鳥類の生息確率が上昇し、平地では農地性鳥類の生息確率が低下する傾向が示された。気候要因については、高標高で繁殖する種群は気温上昇の影響を受けやすい傾向が示唆され、都市性鳥類は比較的温暖化への適応可能性が高いことが示唆された。本研究は、適切な土地管理指針に向けて、人口動態や社会構造の変化を背景とした複数要因の統合的評価に基づく生物多様性予測の重要性を示すものである。