| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-103 (Poster presentation)
現在、生息地の減少や気候変動などにより、多くの哺乳類種が絶滅の危機に瀕している。一方、日本ではシカやイノシシの急増やクマの出現による被害が問題となっており、哺乳類の動態を把握する重要性が高まっている。近年、哺乳類の調査方法として、吸血性または腐肉食性の無脊椎動物が摂取したDNAから脊椎動物を検出するiDNA法(invertebrate-derived DNA)の利用が拡大している。糞虫は哺乳類の糞や腐肉を主な食物とする昆虫で、幅広い気候帯や生物圏に生息しており、ベイトを使用して採集可能である。しかし、糞虫iDNAを利用した研究はほとんどなく、そのほとんどが熱帯地域のものである。本研究では、モニタリングサイト1000森林サイトの14地点で採集した糞虫の腸内DNAを分析して検出された哺乳類の結果から、糞虫iDNAを利用した哺乳類相の調査方法について検討した。合わせて、糞虫と検出された哺乳類の種の関連性について考察した。餌付きトラップで採集した糞虫80個体の腹部を取り外し、DNA抽出を行った。その後、哺乳類を対象としたメタバーコーディングを行い、各糞虫から得られた哺乳類をシーケンスした。その結果、8種の糞虫から6種と1属の哺乳類、1種の鳥類を検出した。哺乳類が検出された8地点について、糞虫iDNAから検出された哺乳類種の分布は、既知の分布と一致していた。哺乳類DNAが回収できたのは半数未満の33個体のみであったが、先行研究においてもDNA回収率は30~70%の幅がある。糞虫の腸内容物の有無や消化などの影響で、DNA回収率はばらつく可能性がある。一方、種多様性の高い熱帯地域で行われていた先行研究と比較すると、分析した糞虫種に対する検出した哺乳類種数が少なかった。回収された哺乳類DNAの大部分がニホンジカであったが、これは近年のシカの増加を反映していると考えられる。また、小型哺乳類や樹上性哺乳類を検出できたことから、従来の哺乳類の調査方法を補完するものとしての利用が期待される。