| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-104 (Poster presentation)
雑種起源の単為生殖種では、複数の両性生殖種(親種)間の交雑や親種のオスと2倍体単為生殖種のメスとの多重交雑により、遺伝的に多様なクローンが形成されることがある。そのため、単為生殖種の起源や複雑な網状進化を理解するためには、近縁な両性生殖種との遺伝的比較が重要である。オガサワラヤモリLepidodactylus lugubrisは、インド¬-太平洋諸島に広く分布し、2倍体および3倍体の複数のクローンからなる全メスの単為生殖種である。特に沖縄県の大東諸島には、固有の2倍体クローン(Da)と多様な3倍体クローン(B’ほか)が分布しているが、本地域には同属の両性生殖種はおらず、クローンの由来に多くの謎を残している。これまでの研究で、南太平洋の広域に分布する2倍体クローン(A)と大東諸島のDaの母系親種はL. moestus(LM)であること、南太平洋の広域に分布する3倍体クローン(C)と大東諸島のB’はクローンDaを母系親集団とすることが判明している。本研究では、本種が組み換えをせずに両性生殖種由来のゲノムを保持する点に着目し、各クローンの核DNA(RAG1)の構成を調べることで、交雑に関与したもう一方の両性生殖種(父系親種)を推定した。2倍体クローンではサンガーシーケンス、3倍体クローンではMiseqを用いたショットガンシーケンスを行い、得られた配列について、複数の塩基が混合する縮重サイトから各クローンの母系親種(集団)の塩基を差し引くことで、父系親種の配列を推定し近縁種との系統関係を調べた。その結果、クローンAとDaの父系はともにL. pantai (LP)と近縁で,特にクローンDaの父系はLPクレードに内包された。さらに、クローンB’の父系もLPクレードに内包され、クローンCの父系はLMと近縁であった。以上より、本種では両性生殖種LMとLPとの交雑によって生じた2倍体クローンDaのメスが、さらにその父系親種LPや母系親種LMのオスと戻し交雑することで、3倍体クローンB’やCを生み出したことが示唆された。