| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-105 (Poster presentation)
移動性の低い動物群での近縁種間の分布は、形質の地理的変異、生殖的隔離成立度の地域差、繁殖干渉、移住の歴史などの影響を受け、多様なパターンを示すと考えられる。しかしながら、分布パターンとその成立要因について詳細に検討された例は少ない。本州、四国、九州に産するアマビコヤスデ属ヤスデ類は、移動性の低さから交尾器形態と体サイズにおいて著しい種内地理的変異を示す。これらヤスデ類について分類学的検討を進める中で、近縁種間での種内地理的変異と分布について以下の3パターンが明らかとなった。(1)近縁種間で同所的分布と分布域の重なりの両方がある:分布から種間の生殖隔離成立が明確なケースである。同所的分布種数は2種がほとんどであり3種は1地点のみである。同所的な種間での体サイズ差については、差が小さな場合と差が大きな場合の両方があり、統一的なパターンは観られていない。(2)近縁種間で交尾器形態にギャップが観られるものの、同所的分布と分布域の重なりはなく、側所的な分布を示す:交尾器形態差から近縁種間での生殖隔離の成立は確実と思われるが、分布は側所的になっている、(3)種内の一地域で交尾器サイズが大きい:交尾器形態のサイズを抜いた形状成分では連続した地理的変異を示すものの、特定の地域にて著しい大型化が観られる。大型集団と小型集団間の生殖隔離の有無については、両者の境界エリアにて詳細な調査が必要である。(まとめ)本ヤスデ類では、体サイズもしくは交尾器サイズに差がある場合に、雄が放精前に交尾を途中で中断する行動を示すことがある(交尾器予備挿入)。近縁種間で体サイズもしくは交尾器サイズに差がある場合、この行動により雄は間違い交尾に伴う無駄な放精をしなくて済む。近縁種間の同所的分布の有無や種数(2種がほとんど)についてはこの行動が関与している可能性がある。