| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-106  (Poster presentation)

日本の針葉樹人工林における生物多様性の体系的評価【A】
A Systematic Review of Biodiversity in Japanese Conifer Plantations【A】

*藤原伊織(九州大学), 楠本聞太郎(シンク・ネイチャー), 榎木勉(九州大学)
*Iori FUJIWARA(Kyushu Univ.), Buntaro KUSUMOTO(Think Nature Inc.), Tsutomu ENOKI(Kyushu Univ.)

人工林は天然林より生物多様性が低いとされているが、日本の森林面積の約4割は人工林であり、生態系保全の観点から人工林の生物多様性に注目することは重要である。日本ではこれまでに人工林内で観察や採集を基にした調査が多数行われているが、体系的レビューを用いて総合的な多様性を研究した例は少ない。本研究では日本国内の針葉樹人工林を対象に、どのような環境要因が林内の生物多様性に及ぼすかについて検討した。また人工林での体系的レビューを行うにあたり、現在の日本で使用可能な文献の把握とデータ利用を行う際の課題点について論じた。
論文検索サイトを用いて、針葉樹人工林内で行われた個体数調査等の文献を分類群問わず幅広く収集し、種多様度と種数を算出した。多様度と種数を目的変数、人工林の林齢, 間伐有無, 周辺広葉樹林までの距離, 植栽樹種を説明変数とした線形モデルによる解析を行った。栄養段階(生産者, 一次消費者, 二次以上の消費者, 分解者)、分類群(植物, 節足動物, 哺乳類, 鳥類, 環形動物, 植物種子)ごとに解析を行った結果、林齢は生産者と消費者、また植物等の多様度, 種数に負の影響を及ぼしていた。周辺広葉樹林までの距離も多くの栄養段階や分類群で負の影響を及ぼしていた。植栽樹種による明確な種多様性への影響は今回確認できなかった。以上の結果より、林齢の低い林分や広葉樹林と近接した林分において林内の生物多様性が高い傾向があることが示された。またデータ利用の観点から文献を精査した結果、間伐に関する記述の不足や地域ごとの文献数の偏りなどが課題として挙げられた。これらの課題点の改善により使用可能な文献が増加し、より信頼性の高い解析結果が得られると考えられる。


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