| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-109 (Poster presentation)
近年、世界的な生物多様性の劣化が深刻化するなか、地域に根差した伝統的グリーンインフラの再評価が進められている。三重県いなべ市の『マンボ』とは、表流水から離れた地域や水利権を持たない地域において農業用水を確保するために作られた暗渠であり、江戸時代から昭和初期にかけて掘削された地域固有の伝統的水利施設である。これまで文化的・歴史的価値や掘削技術に関する研究は行われてきたが、生物多様性保全機能に関する研究は行われていない。本研究では、三重県いなべ市のマンボが市域規模で希少種を含む魚類の分布を確認し、マンボが担う生物多様性保全機能を評価することを目的とし、環境 DNA メタバーコーディングおよび種特異的検出法を実施した。2025 年 6 月 9 日から 7 月 6 日にかけて、いなべ市内 33 地点(マンボ 14 地点、一般水路 10 地点、接続河川 7 地点、ため池 2 地点)において採水を行い、環境 DNA 学会プロトコル(Ver.3.0)に準拠して分析した。その結果、マンボの水路では 8 種の魚類が検出された。二次消費者を中心とする在来種で構成されており、レッドリスト掲載種であるホトケドジョウおよびカジカが検出された。マンボは河川や開水路とは異なる魚類群集を持ちながらも、隣接する他の水域と部分的に共通した群集を形成していることが分かった。本発表では、マンボが有する水路構造と魚類群集との関係性を分析し、伝統的水利施設が地域の生物多様性を支える可能性について議論する。さらに、得られた知見をもとに、世界かんがい施設遺産への登録や市域規模での保全施策への応用可能性について展望する