| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-110  (Poster presentation)

洞窟は陸上生物の多様化を促進するか―洞窟性カマドウマの集団遺伝子解析を通して―【A】
Do caves drive the diversity of terrestrial organisms? ― A case study on the population genetic structure of cave crickets ―【A】

*青柳祐輝, 中濱直之(兵庫県立大学)
*Yuki AOYAGI, Naoyuki NAKAHAMA(University of Hyogo)

洞窟は恒常的に暗黒であり、温度や湿度の変動が小さい特殊な環境である。洞窟内には、眼の退化や体色の淡色化など地下環境に特化した形質をもつ種も生息し、中でも生活史のすべてが地下環境で完結する生物は真洞窟性生物と呼ばれる。洞窟ごとに固有種も数多く報告されているため、従来は洞窟ごとに隔離が生じ、種分化が促進されると考えられてきた。しかし近年、洞窟周辺の地下間隙からも洞窟固有と考えられていた種が発見され、小型の陸上生物の多くは地下間隙を通じて洞窟外にも分布し得ることが示唆されている。すなわち、少なくともこうした小型の陸上生物においては、洞窟環境そのものが多様化を駆動しているとは限らない。以上の議論は、地下間隙を利用可能な小型種を前提としたものであり、空間的な制約を受けやすい大型の分類群においても検証する必要がある。
本研究では、真洞窟性の種も存在すると示唆されているウスリーカマドウマ属に着目した。本属は、真洞窟性陸上生物の中では比較的大型で、脱皮に広い空間を必要とするため、微小な地下間隙を通じた分散は困難であり、洞窟により隔離が生じている可能性がある。加えて、洞窟内で比較的高密度に見られ、サンプリングが容易であり、同属内に地表性種も含まれることから、洞窟集団と地表集団を同一系統群内で比較できる利点がある。そこで本研究では、本属を用いて洞窟集団と地表集団の遺伝構造を比較し、遺伝的分化が洞窟環境によって駆動されているかを検証した。
四国地方において洞窟21地点、林床5地点から各地点7–15個体の本属を採集し、MIG-seq法により多数の一塩基多型(SNP)を取得した。これらのデータを用いて、洞窟間の遺伝子流動解析、及び洞窟・林床間の遺伝構造の比較を実施した。本講演では、洞窟とその周辺部におけるウスリーカマドウマ属の遺伝構造や遺伝子流動について考察する。


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