| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-115  (Poster presentation)

環境DNA分析による水田性カエル類の分布に対する地形および種間相互作用の影響評価【A】
Assessing the Effects of Topography and Interspecific Interactions on the Distribution of Paddy Frogs Using Environmental DNA Analysis【A】

*小倉彰紀(神戸大学), 武島弘彦(福井県里山里海湖研), 丑丸敦史(神戸大学), 源利文(神戸大学)
*Akinori OGURA(Kobe Univ.), Hirohiko TAKESHIMA(Fukui Satoyama-Satoumi Inst.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

水田生態系の多様性は危機的状況にあり、その保全が急務である。従来は水田1筆あたりの生物多様性に着目してきたが、ニッチが類似する近縁種間で競合が生じる可能性があるため、保全策を検討するには共存メカニズムの理解が重要である。本研究では、水田依存性の高いトノサマガエルとナゴヤダルマガエルを対象に、両種の共存メカニズムを明らかにすることを目的とした。
2026年6月に福井県若狭町で、環境DNA分析による2種の網羅的な分布調査を実施した。87の水田で採水し、水サンプルからDNAを抽出した後、2種に特異的な検出系を用いたリアルタイムPCRで相対DNA量を推定した。そして、目的変数にCt値から推定したDNA量、説明変数に河川比高、地形湿潤指数(TWI)、林縁距離、水田周囲50 m以内の水田割合と緑地割合を用いたJoint Species Distribution Models(JSDM)を構築し、各景観要因が2種の分布に与える影響を推定するとともに、残差から種間相互作用を評価した。
環境DNA分析の結果、ナゴヤダルマガエルは30地点、トノサマガエルは56地点で検出された。JSDMの解析から、ナゴヤダルマガエルはTWIが高く林縁付近の湿田を好む傾向が示唆された。また、トノサマガエルは河川比高が低い地域では検出数が少なかった。トノサマガエルは撹乱に弱い繁殖生態を持つため、かつて洪水時に浸水した地域では個体数が少なかったと考えられる。そして現在でも道路などの人工構造物が移動の障壁となり、その分布が維持されている可能性がある。また残差から明確な種間相互作用は確認されず、2種は景観で棲み分けていることが示唆された。以上の結果から、多様な立地の水田を維持することが、2種の棲み分け促進し、地域スケールでの共存を可能にすると考えられる。


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