| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-116 (Poster presentation)
博物館に収蔵されている剥製標本は、過去の生物が有していた遺伝情報を保持する重要な資料であり、過去の遺伝構造や遺伝的多様性を解析するための有力な資源となり得る。日本国内の剥製標本を利用したこれまでの研究では主に、絶滅危惧種や大型猛禽類を対象として進められており、普通種や小型鳥類を大規模に扱った研究は、海外と比較しても少ない。兵庫県立人と自然の博物館には、2万点近くの鳥類剥製標本が収蔵されているが、DNAの劣化度合いや遺伝資源としての有用性に関する体系的な評価は十分に行われていない。日本の高温多湿な気候条件は標本中のDNAの劣化を促進する可能性があることからも、遺伝資源としての有用性を事前に検証する必要性は非常に高いと言える。
そこで本研究では、兵庫県立人と自然の博物館に収蔵されているメジロ(Zosterops japonicus)の剥製標本を対象として、遺伝資源としての有用性を評価することを目的とした。1910年代から1980年代に採集されたメジロの仮剥製71個体を対象に、PCR法によってミトコンドリアDNAのCOI領域を標的とし、ユニバーサルプライマーを用いて163 bpおよび204 bpのDNA断片の増幅を試みることでDNAの断片化の度合いを評価した。また、採集年代がPCRの成功率に与える影響についても、標本の採集年代を説明変数、PCRの成功可否を応答変数とした一般化線形混合モデル (GLMM)を用いて評価した。その結果、1930年代以前の剥製標本で、顕著にDNAが断片化していることが明らかとなった。一方で博物館に収蔵されている1940年代以降の鳥類剥製標本が、一定の条件下において遺伝資源として利用可能であることも示唆された。