| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-118  (Poster presentation)

嚢舌類ウミウシにおける大規模再生能の進化【A】
Evolution of large-scale regeneration in sacoglossan sea slugs【A】

*保田海(奈良女子大学), 三藤清香(奈良女子大学RISE), 阿部豊(京都先端科学大学), 大秦正揚(京都先端科学大学), 遊佐陽一(奈良女子大学)
*Umi YASUDA(Nara Women's Univ.), Sayaka MITOH(Women's Univ. RISE), Yutaka ABE(Kyoto Univ.of Advanced Science), Masaaki OHATA(Kyoto Univ.of Advanced Science), Yoichi YUSA(Nara Women's Univ.)

軟体動物腹足綱に属する嚢舌類のウミウシの一部は、餌藻類から葉緑体を取り込んで光合成に利用し、エネルギーを獲得する盗葉緑体現象を示す。藻類から得た葉緑体を保持できる期間は種によって異なり、大きく3つ(非保持種、短期保持種、長期保持種)に分類される。また、嚢舌類の中でもElysia属の2種は、首元の自切面から心臓を含む体を自ら切り離し、新たな心臓を含む体を頭部から再生させる(大規模再生)。消化管の大部分を失った状態で再生したこと、この2種は頭部にも葉緑体が分布しており光合成が可能な状態であったことから、盗葉緑体現象と大規模再生能には関連があると予想されている。そこで本研究では、Elysia属およびその他の嚢舌類の多くの種において、人為的切断後に大規模再生がみられるかを調査した。また、盗葉緑体現象に関わる生態的要因(盗葉緑体能の有無,頭部のみでの盗葉緑体能の有無,葉緑体保持期間,自切面の有無)を調べ、大規模再生が生じる種に共通する要因を探索した。その結果、今回の研究では4属(Elysia属,Thuridilla属,Plakobranchus属,Costasiella属)で大規模再生が確認でき、再生した種のほとんどが盗葉緑体能を保持していた。また、頭部のみの盗葉緑体能の有無や自切面の有無については、再生する種はどちらも保持している割合が高かったが、Costasiella属ではこれらがなくとも再生がみられた。対して、大規模再生の有無に対して頭部のみでの盗葉緑体能の有無や自切面の有無とは明確な関連がみられなかった。以上の結果より、盗葉緑体による栄養供給が可能な種では、大規模自切・再生が可能であることが多く、両者の間に関連があることが推測された。今後さらに種数を増やし、系統的種間比較などにより大規模再生能の進化に関わる生態的要因に関する解析を行う必要がある。


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