| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-119  (Poster presentation)

アマミマルケシゲンゴロウの本州及び南西諸島における季節消長と個体群間の遺伝子流動【A】
Seasonal occurrence and gene flow among populations of Hydrovatus seminarius, in Honshu and the Nansei Islands【A】

*加藤雅也(大阪公立大院・農), 渡部晃平(石川県ふれあい昆虫館), 上田昇平(大阪公立大院・農), 平井規央(大阪公立大院・農)
*Masaya KATO(Osaka Metropolitan Univ.), Kohei WATANABE(Ishikawa Insect Museum), Shouhei UEDA(Osaka Metropolitan Univ.), Norio HIRAI(Osaka Metropolitan Univ.)

 微小なゲンゴロウ科昆虫のアマミマルケシゲンゴロウHydrovatus seminarius(以下、本種)は、日本国内では東海・近畿地方及び南西諸島に生息している。しかし、開発による湿地の消失などにより生息環境は減少傾向にあり、環境省レッドリスト2020では準絶滅危惧と評価されている。本種の安定した生息地は本州と南西諸島の数地点に限られており、各地点でも個体群の消失が懸念されている。本州と南西諸島では気候が異なるため、本種の季節消長や生活史形質に差異が生じる可能性がある。地域間で本種の季節消長がどのように異なるのかを把握する事が、保全対策を検討する上で重要と考えられる。また、本種は飛翔能力を持つが、生息地間で遺伝子流動が生じているかは検討されていない。そこで本研究では、本州及び南西諸島における本種の季節消長を把握するとともに、生息地間の遺伝的構造の検証を目的とした。
 国内の生息地のうち、和歌山県と奄美大島のそれぞれ2地点において、2024年10月から2025年9月に毎月1回30分間のたも網を用いた掬い採り調査を行い、成虫・新成虫の個体数を計測した。その結果、両地域で類似した季節変動が認められ、初夏と秋に新成虫が増加し、冬季に水中で確認される個体数が減少したことから、本種は冬季に多くの個体が水中以外で越冬し、年2化している可能性が示された。さらに、季節消長調査を実施した4地点についてMIG-seq法に基づくゲノムワイドSNPsを用いて遺伝的構造解析を行った。その結果、和歌山県と奄美大島では遺伝子流動がほとんど認められず、明確な遺伝的分化が確認された。また、和歌山県内(約2.5 km)と奄美大島内(約12 km)の地点間ではそれぞれ遺伝子流動が生じていたが、奄美大島内ではその程度は低く、地点間の遺伝的分化傾向が認められた。


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