| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-122 (Poster presentation)
農作物によってはミツバチではなく、野生ハナバチを積極的に利用した送粉が実施されている。その持続的利用には餌資源や営巣地の確保、遺伝的多様性の把握が重要である。マメコバチ(Osmia cornifrons)は管住性の単独性ハナバチで、主にリンゴの送粉に利用されているが、近年農業現場での個体数減少が報告されている。同一個体群を長期間利用した場合、近親交配が増加し、遺伝的多様性の低下や有効集団サイズ(Ne)の縮小が生じる可能性がある。そこで本研究では、複数地域におけるマメコバチ個体群の遺伝構造および遺伝的多様性、Neを評価し、今後の利用管理への活用を目的とした。福島県の野生生息地1地点と福島・青森・長野の3県6地点の果樹園に巣筒を設置し、営巣後に回収した。回収した成虫の後脚からDNAを抽出した。MIG-seq法によりSNPデータを取得し、遺伝構造を推定後に観測ヘテロ接合度(Ho)とNeを算出した。STRUCTURE解析ではK=2が最も支持され、青森と福島・長野の間に分化が示唆された。K=3では長野に特徴的な成分が現れ、福島との混合的な構成を示した。県平均Hoは福島0.172、青森0.161、長野0.159、Neは福島68.6-90.3、青森76.7-103.5、長野34.1-55.2であった。この地域差には地理的隔離に加え、導入個体の由来や更新頻度といった果樹園における管理体系の違いが関与していると考えられる。特に長野ではHoとNeが小さく、繁殖親数の減少やボトルネックの影響が示唆された。これは同一個体群の長期間利用により多様性低下やNe縮小が進むという仮説を支持し、Neが小さい地域では多様性低下や近交弱勢が進むリスクが相対的に高いと考えられる。マメコバチの持続的利用のためには、地域集団を混合させない管理単位の設定と、系統の固定化を避けるための計画的な更新や交換が必要である。