| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-126 (Poster presentation)
造網性クモ類は餌となる昆虫類を捕獲するために網を張るが、網は野外環境に暴露されたタンパク質性の構造物とも捉えられ、空気中を飛散する微生物とも何らかの相互作用を有する可能性がある。実際に、先行研究ではクモ網が花粉や真菌胞子などバイオエアロゾルを捕集することが報告されている。ただし、網上の微生物相に関する研究例は少なく、捕集される菌類相やその決定要因については十分に解明されていない。本研究では、円網型のクモ網に捕集される真菌胞子の多様性について明らかにするため、捕集される胞子の形態と網形質との関係を調査した。
2025年4月から11月にかけて筑波大学構内で発見したクモの網からプレパラートを作製し、光学顕微鏡で胞子を観察した。胞子形態データとして胞子の大きさ・形状・色・数を、網形質データとして網の高さ・大きさ・胞子の付着箇所(縦糸か横糸)・クモの種類を記録した。ジョロウグモは特殊な円網を張るため、全ての網・ジョロウグモ網・その他クモ網の3区分で胞子形態と網形質の関係を解析した。
その結果、高所に張られた網ほど捕集胞子数が多く、網の高さにより胞子形状組成が変化することが示された。一方、胞子の大きさや色と網形質との明確な関係は認められなかった。また、胞子は横糸に最も多く付着していたが、縦糸にも付着が確認された。なお、網の大きさによらずプレパラートの観察範囲は同一としたため、網の大きさと胞子形態の間には関係は確認できなかった。
これらの結果から、高所ほど空気中の胞子の存在量が多いこと、または網への付着効率が高いことが示唆された。さらに網の高さによって菌類組成が変化したことから、胞子の由来が垂直方向で異なる可能性が考えられる。また、粘着性(粘球)を持つ横糸だけでなく縦糸にも胞子の付着が確認できたことから、胞子の捕集には糸の粘着性だけでなく静電気など別の要因も関与することが考えられる。