| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-132 (Poster presentation)
外生菌根菌は樹木と共生し水・栄養吸収を助けるため、森林生態系において重要で、菌根菌を介した植物間のシグナル伝達の可能性も示唆されている。しかし、野外で外生菌根菌と共生する樹木間が対象の研究例はない。外生菌根菌のコロニー上には、円状に子実体が連なる「菌輪」が発生することがある。菌輪は同一コロニー由来で、子実体間は地下菌糸で繋がっていると考えられる。本研究は菌輪に着目し、テングタケ子実体間、推定宿主のブナとテングタケ間の電気的関係性を報告する。2024年10月、東北大学川渡フィールドセンター内のブナ並木の地上に発生した直径約5mのテングタケ菌輪から、子実体16個に電極を取り付け1秒間隔で62時間電位変化を測定した。最初の22時間は人為的撹乱のない無刺激期間、次の12時間は測定開始から約30分後に10秒間、1つのテングタケ子実体(#7)の傘一部をバーナーで炙った。最後の28時間は一部の電極をブナの幹・枝・葉に付け替えテングタケと同様に電位変化を測定した。得られた電位変化の時系列データから、情報理論に基づく因果解析(UIC)により子実体間と子実体―ブナ間の電気的因果関係を推定した。無刺激期間は、時間変化とともに因果関係も変化していた。炙る処理では、処理前30分間は静的だった菌輪内の因果関係が、処理後30分間では#7中心の因果関係に変化し、攪乱後に因果関係は有意に強くなった。また、攪乱後5~10分で#7に対して双方向の因果関係が検出され、15~20分で#7からの因果関係が最大になったことから、攪乱刺激による子実体の電位変化は、菌輪内で双方向的に影響し合っている可能性がある。子実体―ブナでは、2本のブナ間、ブナと子実体の間にも電位変化の因果関係が検出された。以上から、テングタケ菌輪内部や、それと菌根共生していると推定されるブナ成木との間に電気的シグナル伝達が存在する可能性が示唆された。