| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-134  (Poster presentation)

枯れ木のマイホームはカビだらけ?—ハナカミキリと共生酵母が変える真菌群集【A】
My sweet FUNGI-FULL home? —Flower longicorn beetle-yeast symbiosis alters fungal community in deadwood【A】

*宮下明里, 土岐和多瑠(名古屋大・院・生命農)
*Akari MIYASHITA, Wataru TOKI(Nagoya University)

枯死木は、菌類による長期的な分解を通して多様な生物の生活空間となり、生物多様性の創出に重要な役割を果たす。特に腐朽した枯死木には、複雑な生物間相互作用を経た多様な菌群集が形成される。材食性昆虫は、穿孔や菌類を運搬することで、材内の菌群集を変化させる要因となる。材食性昆虫の多くは、木材消化を補助する菌類と共生する(消化共生)。これら昆虫共生菌は、材内の先住菌にとって昆虫によって導入される新参者である。しかし、腐朽材を利用する材食性昆虫-共生菌が先住菌群集をどう変化させるかは未解明な点が多い。
ハナカミキリ(コウチュウ目カミキリムシ科)は、酵母と消化共生する材食性昆虫である。幼虫は、腐朽材に坑道を掘って、材を食べながら成長する。坑道にはフラス(木質繊維と糞の混合物)が詰められる。共生酵母は、幼虫体内の共生器官から消化管内に放出されるため、糞と共に排出され、フラス中に存在すると考えられる。そのため、共生酵母はフラスを介して材内の菌群集や先住菌の増殖に影響を及ぼす可能性がある。
そこで本研究では、ハナカミキリ-酵母共生系が腐朽材内の菌群集に与える影響を明らかにすることを目的とした。愛知県のヒノキ人工林にて、ヒノキ腐朽材中のヨツスジハナカミキリ幼虫のフラスと坑道周辺の材の菌群集を比較したところ、フラスでは共生酵母が優占する単純な群集であったのに対し、材では様々な糸状菌から成る複雑な群集が成立していた。共生酵母と材由来糸状菌の対峙培養を行ったところ、共生酵母は材由来糸状菌の種によって増殖に与える影響が異なった。
これらの結果は、ハナカミキリ-酵母共生系が、枯死木内の菌群集を局所的に改変し、先住菌と多様な相互作用を創出することを示唆する。本共生系は、枯死木の菌類多様性に影響を与える、重要な生物間相互作用系であると考えられる。


日本生態学会