| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-135 (Poster presentation)
薬剤耐性菌は現在世界的に重要視されている公衆衛生上の問題の一つである. 薬剤耐性菌は病院以外の環境中でも検出されており, 畜産農場や下水処理場などのホットスポットを中心に, 河川などの環境中にも広がっていることが危惧されている. 環境中の薬剤耐性菌を減らすために, 下水処理場などの閉鎖環境で使用されている殺菌法を用いることは, 環境に与える負荷が大きく推奨されない. そこで, 自然界の微生物ループに着目し, 細菌の捕食者である原生生物を用いた捕食による薬剤耐性菌除去を試みた. 本研究室では, 原生生物のParameciumが薬剤耐性菌を24時間以内に90%以上捕食消化することを既に確認している. しかし、24時間以上長期培養した際に, 耐性遺伝子は消化され続けるのか, あるいは環境条件によって捕食者のゲノムに取り込まれるのかは, 知見が乏しい. そこで本研究では, Parameciumによる薬剤耐性菌の消化効率と, その耐性遺伝子のゲノムへの取り込みを評価することを目的とした.
Paramecium 2種(Y-2・dcRT-50)と, 抗生物質2種(カナマイシン・クロラムフェニコール)の薬剤耐性遺伝子プラスミド(pNT563・pAM239)を導入した大腸菌Escherichia coli(E. coli)2種(DH5α・JM109)を用いて, Parameciumと共培養することで捕食実験を行い, LB培地を用いてCFUを算出し, Parameciumによる捕食効率を確認した. また, E. coliにIsopropyl-β-D-thiogalactopyranoside を導入後, 捕食実験を行い, 蛍光顕微鏡を用いてE. coliがParameciumの食胞に取り込まれていることを確認した.
2種のParameciumと, 2種の薬剤耐性遺伝子プラスミドを導入した2種のE. coliを用いて行った捕食実験では, Parameciumはほとんどの条件において2時間以内に80%以上の薬剤耐性菌を捕食, 食胞内に取り込んでいた. また, 長期共培養でのParameciumによる耐性遺伝子獲得の可能性については, 培養条件を検討し, ゲノムへの取り込みの有無を確認する予定である.