| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-137 (Poster presentation)
北方林土壌は陸域炭素の巨大な貯蔵庫であり、土壌有機物の分解過程は気候変動下の炭素循環を規定する。降水パターンの変化など乾燥ストレスへの微生物応答は、多様な樹種を持つ天然林と単一樹種の人工林では、リターの質や根圏環境が異なり、乾燥ストレスに対する分解機能の応答に差異が生じると予想される。本研究は、天然林と人工林における乾燥が、土壌微生物の分解多機能性および機能組成、群集構造、さらに実分解活性に及ぼす影響の解明を目的とした。
北海道大学苫小牧研究林のミズナラ天然林およびトドマツ人工林において、乾燥処理区と対照区を設け、2024年に土壌試料を採取した。試料について、EcoPlateによる炭素源利用能(分解多機能性)、DNAメタバーコーディングによる微生物の群集構造、および土壌理化学性(含水率、pH、全炭素(C)・全窒素含有量(N)、C/N比)を測定した。また、乾燥処理による実分解活性への影響を検証するため、翌2025年に土壌呼吸速度を計測した。
2024年には両林種とも8月の土壌含水率に処理間の有意な差は無かった。しかし天然林の乾燥区では、土壌のC・N含有量が対照区より有意に高く、分解多機能性と機能組成は有意な処理間差が確認された。一方、微生物の群集構造に変化はなかった。
対照的に、人工林では全測定項目で処理間で有意差はなかった。
また、2025年の計測において、乾燥区における土壌呼吸速度の有意な低下が確認された。
以上から、乾燥初期の土壌微生物の応答は林種特異的であることが示された。天然林でのC・N蓄積(2024年)と翌年の土壌呼吸低下(2025年)は、継続的な実分解の抑制を裏付ける。天然林では、この実分解の抑制に伴う基質環境の変化に応答して、微生物群集の潜在的な分解多機能性が誘導されたと考えられる。一方、人工林では環境変動に対する抵抗性を示し、既存の機能が維持された。