| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-138  (Poster presentation)

同一湿原内に出現するラン科植物は菌根菌を共有するのか?【A】
Do Orchidaceae plants distributing the same marsh share their mycorrhizal fungi?【A】

*長棟光祐(鳥取大学・院・連農), 久保田憲(鳥取大学・院・連農), 日置佳之(鳥取大学), 永松大(鳥取大学)
*Kosuke NAGAMUNE(UGSAS Tottori Univ.), Ken KUBOTA(UGSAS Tottori Univ.), Yoshiyuki HIOKI(Tottori Univ.), Dai NAGAMATSU(Tottori Univ.)

ラン科植物は生活に必要な養分を菌類(菌根菌)から得ており、菌根菌種を特定することは、ラン科植物の生活史特性の理解に貢献する。鳥取県東部には、希少種であるトキソウ(Pj)、コバノトンボソウ(Ptn)、ミズチドリ(Ph)、カキラン(Et)、サギソウ(Pr)、ミズトンボ(Hs)が出現する小規模湿原があり、多様なラン科植物を養う菌種を理解するのに適している。例えば、複数のラン科植物が特定の菌根菌種を共有する場合、菌の性状理解により、複数ラン科植物の一括した保全につながることが期待できる。本研究では、湿原生ランの生育に重要と思われる菌根菌種を特定することを目的とした。
2024年と2025年に各ラン科植物の根を採集し、汚れを除去した根切片を作成しDNA解析に供試した。菌根由来培養株を確立できた場合、それらも解析対象とした。Pj 14個体15サンプル、Ptn 7個体9サンプル、Ph 8個体9サンプル、Et 7個体15サンプル、Pr 14個体16サンプル、Hs 8個体12サンプルを供試した。これらのうち、16サンプルは解析可能な波形データを入手できなかったため解析対象外とした。PCRはプライマーバイアスを考慮して、ITS5-ITS4、ITS5-ITS4Tul、ITS5-ITS4Tul2の3つのペアを用いた。
 DNA分析の結果、Tulasnella属菌が高頻度に検出された。Pj、Ptn、Ph、Pr、HsからTulasnella sp. 1が、Pj、Ph、Et、Pr、HsからTulasnella sp. 3が検出された。検出数は少ないが、EtからTulasnella sp. 2とTulasnella sp. 4、PhからTulasnella sp. 5が検出された。Tulasnella属以外では、PjからNigroporus sp.、PrからCudoniella sp.、HsからRhizoctonia sp.が検出された。PtnからはTulasnella sp. 1のみが検出され、菌根菌の嗜好性があると思われる。EtからはTulasnella sp. 1が検出されなかったが、Tulasnella属3種が検出された。Pj、Ph、Pr、HsからはTulasnella sp. 1とTulasnella sp. 3の両方が検出されたことから、これらは同一湿原内で菌根菌を共有していると考えられた。


日本生態学会