| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-140 (Poster presentation)
近年、日本ではシカの過採食による下層植生の衰退・消失が進行し、生態系への影響が懸念されている。下層植生の消失により、細菌や真菌をはじめとする土壌微生物の群集構造が変化することが報告されている。しかし先行研究の多くは、下層植生の消失から半年以降に単一時点のみでの調査に基づくため、微生物群集への影響が、下層植生の消失直後から起こり得るのか、そして、その影響の有無が採取時期によって異なるのかといった知見は乏しい。そこで、本研究では、下層植生の消失初期の3か月間に着目し、土壌微生物群集とその時間的動態を評価した。
調査は京都大学北海道研究林標茶区で行った。調査地はミズナラが優占する落葉樹広葉樹林であり、下層植生はミヤコザサが優占している。下層植生の消失の影響を評価するために、下層植生の地上部の刈り取りを行った。林内に6m四方のプロットを6か所設置し、各プロットを3m四方の4つの区画(1区画を対照区、残り3区画を刈り取り区)に等分し、計24区画とした。2024年7月に下層植生の刈り取り処理を行った。表層0-10cm深の土壌を刈り取り直前、刈り取り1週間後、2か月後、3か月後の計4回採取した。土壌微生物群集は細菌16S rRNA、真菌ITS領域を対象としたDNAメタバーコディングにより評価した。
細菌と真菌はそれぞれ13,853 ASVと4,930 ASVが検出され、両群集とも採取時期の効果が有意であった。細菌群集では、刈り取り処理後2か月目のみにおいて、刈り取り区と対照区の間でASV数、ASV組成、Acidobacteriae綱の相対リード数が変化していた。真菌群集では、いずれの時期においても刈り取り処理の影響は検出されなかった。細菌群集において処理後2か月目のみに応答が見られたことは、下層植生の消失が土壌微生物群集に与える影響が時間的に変動することを示唆しており、消失からの経過期間や季節に応じて、その現れ方が異なる可能性がある。