| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-145  (Poster presentation)

変形菌の生息場所としての枯死根【A】
Dead roots as habitats for myxomycetes【A】

*山本奈波(近畿大学), 葛西弘(福井県立大学), 澤畠拓夫(近畿大学)
*Nanami YAMAMOTO(Kindai Univ.), Hiro KASAI(Fukui Pref.Univ.), Takuo SAWAHATA(Kindai Univ.)

枯死木は, 森林内の植物遺体の中でも極めて大きなバイオマスを占め, 倒木や切り株, 立ち枯れなど多様な形態を有しており, 多くの生物に対して生息場所や食物資源として機能している. 枯死木には多種多様な変形菌が生息しており, また枯死木の分解過程の速度調整に関与している. これまでの研究の多くは地上部の枯死木を対象としており, 地下部の枯死木と変形菌の関係に関する知見は不足している. そこで, 地下部の枯死木の中でも主要なバイオマス量を保持する「枯死根」に着目し, 地下部における変形菌の生息実態を明らかにすることを目的として調査を行った.
本研究では, 近畿大学農学部奈良キャンパス内のアカマツ林を調査地とし, 季節性を考慮するために春と夏の2回調査を行った. 調査方法は, まず20本の切り株を無作為に選抜し, 調査対象木とした. 次に, 切り株の地表に露出している部分を地上部の枯死木, 同切り株の土壌に覆われている枯死根を地下部の枯死木としてそれぞれ採取した. 持ち帰った材サンプルは洗浄後, 一定量をシャーレに入れ, 3か月間湿室培養を行った. 培養期間中は, 週に1度, 子実体や変形体の有無を確認し, 子実体が確認できた場合には種の同定を行った. 加えて, 枯死材の物理化学性と変形菌の関係を評価するために採取した枯死木の腐朽タイプ, 硬度, ㏗, 含水率を計測した.
変形菌の出現頻度を比較したところ, 一部で有意に出現頻度が低い季節があったものの, 地下部である枯死根からも, 地上部と同等に変形菌が出現した. 地上部と地下部では共通する種がある一方で, 群集構造には有意な違いがみられた. 群集解析を行ったところ, 材の種類, 季節, 腐朽タイプのそれぞれが群集構造に影響を与えていた. これらの結果から, 地下部の枯死木にも地上部と同程度の変形菌が生息していることが明らかとなり, 変形菌にとって重要な生息環境の1つとなっていることが示された.


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