| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-147 (Poster presentation)
ブナ科やマツ科等の森林の主要構成樹種と相利共生している外生菌根菌の繁殖や定着過程は、植生や生態系機能に大きな影響を与える。外生菌根菌の多くは地上に大型の子実体を形成し、一般的に風を介して胞子を分散する繁殖形態をもつと言われてきた。しかし、地上に形成された子実体の胞子が再び宿主と菌根を形成するためには、地下部(根圏)へ垂直運搬される必要がある。この胞子の垂直運搬プロセスの解明にむけ、運搬者として菌食性の節足動物が注目されてきた。しかし、これら動物の多くは土壌の穿孔能力に乏しいなど、外生菌根菌の運搬者の理解は未だ不明な点が多く残る。そこで本研究では、子実体から地下の根圏まで胞子を直接運搬可能な動物として、食糞性昆虫のうち、特にセンチコガネ科の存在に着目した。本種群は、地上部で子実体を摂食し、なおかつ営巣や産卵の際には地下部を利用する。この場合、もし本種群に摂食された子実体の胞子が排泄後も菌根形成能力を有しているのなら、外生菌根菌胞子の垂直運搬プロセスにおいて、本種群の貢献度は極めて高いだろう。しかし、外生菌根菌胞子と本種群との関係は、これまで摂食後の胞子の損傷が評価されたに過ぎない。そこで、センチコガネ科の胞子運搬者としての潜在能を明らかにすべく、マツ属に共生する外生菌根菌(ヌメリイグチ属)2種を対象に、オオセンチコガネの摂食が胞子の菌根形成能力に及ぼす影響を調査した。
本種によって摂食された胞子の活性率や損傷度の評価と、これら胞子をマツ属の根に接種した後の菌根形成の実態を調査した。その結果、本種による摂食後、2種ともに胞子の96%以上が無傷であったが、活性率は有意に減少した。ただし、大部分の胞子で摂食影響が見られなかったことから、本属の胞子はいずれも、摂食の有無を問わず菌根形成する可能性は高いと考えられる。本発表ではこの他、菌根形成実験の経過についても報告する。