| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-148  (Poster presentation)

アオウミガメ腸内細菌による餌分解能力:バイオロギングによる行動データと合わせて【A】
Diet degradation ability of gut bacteria in green turtles: revealed by combining biologging data.【A】

*菅野省吾(東京大学, 大気海洋研究所), 土田さやか(中部大学), 橋戸南美(中部大学), 牛田一成(中部大学), 河合萌(東京大学, 大気海洋研究所), 亀田和成(黒島研究所), 佐藤克文(東京大学, 大気海洋研究所)
*Shogo V KANNO(UTokyo, AORI), Sayaka TUCHIDA(Chubu Univ.), Nami HASHIDO(Chubu Univ.), Kazunari USHIDA(Chubu Univ.), Megumi KAWAI(UTokyo, AORI), Kazunari KAMEDA(Kuroshima Research Station), Katsufumi SATOU(UTokyo, AORI)

 アオウミガメは海藻・海草を採餌する草食動物であり,紅藻や海草を中心に採餌する.本種は個体ごとに特定の餌種に嗜好性を持ち,この理由に腸内細菌叢の違いが考えられている.海藻・海草は分類ごとに異なる難分解性の多糖類で構成されるが,アオウミガメはこれらの分解酵素をもたない.そのため腸内細菌による発酵分解産物をエネルギーとしているが,採餌していた餌種をどれほど分解できているのかは不明である.
 本研究では,種々の海藻・海草とゼラチン質プランクトンを採餌する三陸個体と,紅藻や海草のみを採餌する沖縄県黒島で野外調査と培養実験から食性解析と腸内細菌による基質分解能の調査を行った.アオウミガメの糞と褐藻,紅藻,緑藻,海草のそれぞれを基質に作成した培地との共培養によって発生した有機酸の測定から,アオウミガメの餌分解能力を調べ,その個体が野生下で実際にどの餌種を採餌していたかをバイオロギング技術を用いた放流実験から検証した.
 発酵試験の結果,全ての個体で酢酸に次いで,酪酸の産生量がプロピオン酸より多いという一般的な草食動物とは異なる傾向を示した.有機酸産生量は,黒島347 mmol/L〜429 mmol/L,三陸が267 mmol/L〜281 mmol/Lと黒島の方が多かった.褐藻基質の培地はその他の基質より有機酸の産生量は有意に低く,紅藻,緑藻,海草基質の培地の間では有機酸産生量に違いはなかった.放流実験から得られたビデオデータの食性解析の結果,供試個体は全て紅藻を主に採餌していたことから,選好する餌種以外も分解能を有していることが明らかとなった.
 実験供試個体が特に紅藻を選好していた理由として,紅藻は一般に他の海藻・海草よりもタンパク質を多く含む.タンパク質は自身の酵素で処理することが可能であり,上部消化管と下部消化管の両方で利用することができるために広く採餌されていた可能性がある.


日本生態学会