| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-150 (Poster presentation)
植物–微生物相互作用は、土壌微生物叢に大きな影響をもたらすと考えられる。植物–微生物相互作用の代表例であるマメ科植物–根粒菌相互作用では、マメ科植物が自身の成長に適した根粒菌と選択的に共生関係を結び、根粒内で増殖させ、種子生産が終わると土壌中に放出するサイクルを通じて、植物近傍の土壌中で植物の成長に適した根粒菌が濃縮される可能性がある。このような土壌菌叢変化の過程を理解するためには、自然環境下におけるマメ科植物周辺の土壌菌叢を調査し、植物の成長への影響や、根粒菌が植物から受ける選択の実態を明らかにする必要がある。そこで本研究では、ミヤコグサ(Lotus japonicus)自生地周辺の土壌微生物叢がミヤコグサとの共生を介して形成される過程及び機構の解明を目指した。
野生のミヤコグサ近傍および遠方の土壌サンプルに由来するミヤコグサ共生根粒菌7系統を単離し、Nanoporeによる全ゲノムシーケンスおよびミヤコグサへの接種実験を行なった。その結果、ミヤコグサ近傍からはMesorhizobium属根粒菌が単離された一方、遠方からは植物成長促進効果が低いSinorhizobium属の根粒菌が発見された。さらに、ミヤコグサは植物成長促進効果の高い根粒菌を選好するのかを明らかにするため、単離した根粒菌を2系統ずつ組み合わせてミヤコグサに等量ずつ混合接種し、各系統が根粒を形成した割合を推定した。その結果、Sinorhizobium属根粒菌とMesorhizobium属根粒菌を混合して接種した場合、Mesorhizobium属がほとんどの根粒を占有することが示唆された。
これらの結果から、ミヤコグサ自生地周辺における根粒菌叢の違いが、部分的にはミヤコグサによる選好性によって形成されてきた可能性が考えられた。今後は、土壌根粒菌叢の形成機構を圃場実験や数理モデルを用いて実証することが期待される。