| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-153  (Poster presentation)

鳥類による病原性真菌の伝播可能性:ネットワーク解析による検討【A】
Possible transmission of pathogenic fungi by birds: Study through network analysis【A】

*梶山滉太, 新井優梨花, 柴田紗帆, 高橋弘喜, 村上正志(千葉大学)
*Kohta KAJIYAMA, Yurika ARAI, Saho SHIBATA, Hiroki TAKAHASHI, Masashi MURAKAMI(Chiba Univ.)

ヒトは常に多様な感染症の脅威にさらされている。そのなかで真菌感染症は、病原性真菌を原因とするが、真菌は人間と同じ真核生物であるため、細菌感染症と比較して治療薬が極めて限定され、治療に困難が伴う。こうした感染症のなかには、動物からヒトへ伝播する「人獣共通感染症」が数多く存在する。一方で、鳥の体内に存在する真菌が報告されており、また、鳥は非常に長い距離を「渡る」ため、病原性真菌を広く拡散している可能性がある。しかしながら、網羅的に鳥と真菌の関係を調査した研究は少なく、日本国内において生きた野鳥が運ぶ真菌を調査した研究は存在しない。そこで本研究では、国内の野鳥と真菌の相互作用ネットワークを構築し、鳥種ごとに運搬する真菌種に偏りがあるか、一方、真菌種ごとに運ばれる鳥類種に偏りがあるかを、それぞれ検討した。日本国内10地点から、ツル類、ガンカモ類からスズメ目小鳥類まで28種の野鳥の新鮮な糞を採取し、SDA培地、および液体培地を用いて、野外を想定した25℃と鳥の体内を想定した37℃で真菌を培養した。培養は基本的に2段階行って単離した。培養された真菌は、ある程度目視で分類したあと、リボソーム領域配列のDNAシーケンスを用いて種同定した。その結果、600株以上の真菌を分離し、200種以上の真菌種を同定した。この結果から鳥種、真菌種をそれぞれノードとした鳥―真菌間のネットワーク図を作成した。その概観から、鳥種ごとに特異的に存在する真菌が多いことが示され、解析の結果からも、真菌種の分布は有意に特定の鳥種に偏っていることが示された。また、生息地等の外的要因により真菌の感染の有無が決まるか検討した。これらの結果は、鳥類による真菌の伝播拡散過程の予測につながるものである。


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