| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-154  (Poster presentation)

リグニン分解真菌は分散制限を受けているのか:都市公園における検証【A】
Exploring the effects of dispersal limitation on lignin-degrading fungi: A study in urban parks【A】

*荻田統(千葉大・理), 村上正志(千葉大・院・理)
*Subaru OGITA(Fac. Sci., Chiba Univ.), Masashi MURAKAMI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

真菌は、分解者として物質循環において主要な役割を果たすだけでなく、共生者、病原体といった多様な生活様式を通して、ヒトを含む多くの生物と相互作用しており、生態系機能の中核を担う存在といえる。近年、都市化が生物に様々な影響を与えることが分かってきた。真菌における先行研究からは、都市における群集構造の変化や、熱耐性の強化、色素形成の喪失などの変化が示されている。このような都市における進化では、ボトルネック効果による浮動と、都市特有の強い選択圧による適応が同時に進行する。都市化が真菌に与える影響を調査した先行研究では、環境DNAメタバーコーディングを用いて種多様性や群集構造を解析したものが多く、その表現型や種内多様性に関する情報を同時に検討した研究は少ない。そこで、本研究では都市および森林由来の環境真菌を分離・培養し、株間における遺伝子の種内変異と表現型の比較解析から、都市化が真菌に与える影響の評価を試みた。材料として、生態系における重要な分解者のリグニン分解真菌であるカワラタケ Trametes versicolor を用いた。関東の都市部の公園3地点と連続した森林3地点の計6地点でサンプリングを行い、カワラタケの子実体および空気中から採取された胞子からリグニン分解真菌を分離した。これらについて、ITS領域により種同定を行い、配列の類似度から種内変異を解析した。また、各株について真菌の一般的な培養温度である25℃と、都市の高温を想定した35℃でそれぞれ培養し、温度感受性を比較した。さらに、炭素源にリグニンのみを含む液体培地を用いて、リグニン分解能力の比較も行った。解析の結果、都市と森林の株間で温度感受性に変化は認められなかった。分子解析による種内多様性の比較からも、分散制限の証拠は認められなかった。一方で、リグニン分解能力については都市由来の株で低くなる傾向が見られた。


日本生態学会