| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-157  (Poster presentation)

冷温帯における伐倒切り株の経年腐朽と針葉樹にとっての更新適地化【A】
The relationship between the decay of logged stumps and their transition into regeneration sites for conifers in cool temperate forests【A】

*佐野智泉, 岡田慶一(東京農業大学)
*Chisen SANO, Kei-ichi OKADA(Tokyo Univ. Agri.)

倒木は針葉樹が更新するために不可欠な環境である。一方で、発生した倒木が更新環境適地に至るプロセスについての知見は乏しい。本研究では腐朽進行と更新状況の経年変化から、倒木上が更新可能な環境に至るプロセスを明らかにすることを目的とした。択伐後に残された切り株と施業履歴から、年数経緯に伴う腐朽進行と更新状況を調査した。北海道東部・阿寒湖周辺に位置する、前田一歩園財団が管理する択伐天然林において、2~24年経過したトドマツの切り株94個を対象に調査した。各切株について、ナイフテストによる腐朽度、コケ植物の被度と種類、針葉樹実生の個体数と樹高を調査した。その結果、切株上における針葉樹更新は腐朽初期段階から確認されたが、実生密度や樹高成長の上昇は緩やかで、約15年経過した切株で実生密度がピークに達し、それを追うように樹高成長が加速した。また、実生密度と平均樹高の関係を切株年数5年ごとに区切って解析した結果、15年以上経過した切株上では、実生密度と樹高に負の相関がみられ、自己間引きによる樹高成長が進行していることが確認された。一方、それより若い年代では競争密度効果は確認されなかった。このことから、約15年が経過するまでの切り株上では、針葉樹実生の生存率が低く、個体の入れ替わりが激しい環境であることが推察された。また、切り株の腐朽、コケ植物の発達は年経過に純進行し、コケ植物の被覆は約10年で飽和することが確認された。このことから、倒木に十分な種子が散布され実生の生存率が高まるには、腐朽の進行による木質部分の軟化や、コケ植物の被覆によって起こる倒木表面の保水性、種子定着率向上などの実生成長に関わる条件の変化が必要だと示された。それらの条件が揃うまでに平均樹高や実生密度の結果からおよそ15年の期間を要する可能性があると考えられた。


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