| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-158 (Poster presentation)
知床の森林再生事業地では、樹木多様化を目的として2018年よりアカエゾマツ過密林分の間伐施業が実施されている。同間伐地においては、これまでに広葉樹実生の更新状況や樹種による分布傾向が明らかにされているが、今後更新が進んでいく中で、環境条件に応じた草本植物との競争やシカの被食圧が更新成績に影響すると懸念される。密度競争の進行や、個体生残を規定する要因については十分に明らかにされていない。本研究では、間伐後6–8年経過した林分を対象に、種子散布により更新した広葉樹実生個体群の生育過程を把握し、個体の生残を規定する環境要因を明らかにすることを目的とした。間伐施業の行われた4つの調査地において合計130個の2m×5mのコドラートを設置し、樹高10 cm以上の樹木個体を対象として毎木調査した。さらに、各個体の頂芽採食の有無、コドラート内における優占草本種および植被率を記録した。環境条件として、各コドラートの地表および地上2m高における相対光量子密度を計測した。得られた個体群構造と各コドラートの競争密度関係に対する各主要因の関係を解析した。その結果、樹高で見る階層構造は、樹高20㎝を越えた階層で個体数が大きく減少した。さらに、樹高の増加に伴って被食率が高まり、樹高20 cm前後で5割を超える傾向が認められた。このことから、樹高約30 cmに達する段階でエゾシカの被食による成長阻害が生じ始めると示唆された。さらに、樹高成長と樹木密度の関係から、コドラートによって混みあい度が異なり、最多密度線が形成されるほど高密度の区画も確認された。本発表では、混みあい度から見る更新状況の違いを、光環境やエゾシカによる採食圧、各樹種の分布傾向の関係から整理し報告する。