| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-162 (Poster presentation)
亜高山帯と高山帯の境界に位置する森林限界移行帯は, 気候変動に対して敏感な生態系であり, 温暖化に伴う森林の上昇が予測されている. 一方で, 森林限界の上昇は高山帯植生を縮小・断片化させ, 局所的な絶滅リスクを高める可能性が指摘されている. そのため, 森林動態を規定する要因の解明が求められている. 森林限界移行帯は気温の影響を強く受けるとされるが, 気候要因のみではその変動を十分に説明できておらず, 地形条件等と植生分布や個体の成長間の関係の解明の重要性が指摘されている.
本研究では, 北アルプス乗鞍岳周辺を調査地とし, 4つの植生分布および2種の高木樹種の成長と地形要因との関係を, 分布と成長の両側面から解析した. 植生分布については一般化加法モデル(GAM)を用い, 標高, 斜面方位, 傾斜などと地形条件との非線形的な関係を評価した. また, 森林限界移行帯を構成する亜高山針葉樹および亜高山広葉樹については, 樹高変化から成長率を算出し, 成長と地形条件の関係を解析した. さらに, moving-window regression により, 地形条件が分布や成長に与える影響が標高傾度にそってどのように変化するかを検討した.
解析の結果, 地形条件の影響は各植生によって異なっており, 多くの変数間で非線形的な関係がみられた. 特に斜面方位はすべての植生タイプで有意な影響を示し(p < 0.01), 各植生はそれぞれ異なる斜面方位に偏って分布していた. 一方, 成長に対する地形要因の影響は両樹種で概ね一致し, 分布と成長で好適な地形条件が必ずしも一致していなかった. また, 高い標高ほど斜面方位等の一部の地形要因の影響が強まる傾向が認められた. これらの結果は, 森林限界移行帯の動態が気候要因に加えて地形条件によって強く制御されていることを示しており, 将来の森林拡大予測や高山帯生態系の保全を考える上で重要な知見を提供する.