| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-164 (Poster presentation)
熱帯落葉樹林は、カンボジアで最も広い面積を占める森林植生である。同森林は混交落葉樹林、落葉フタバガキ林、サバンナ林に細分されるが、区分の曖昧さが不適切な管理を招いており、上層木のみならず生態系機能の維持に重要な下層植生を含めたゾーニングと森林管理が求められている。しかし、熱帯落葉樹林の下層植生に関する知見は限定的であるため、その構造・種組成と生育環境との関連性の解明を目的として本研究を行った。
カンボジア・シェムリアップ州の熱帯落葉樹林に設置されたプロット(1 ha)内の一部(0.09 ha)において、2025年4月、胸高周囲長3–15 cmの樹木を下層木として毎木調査を行うとともに、土壌含水率、開空度、草本層における植生の被度・群度を測定した。また、非計量多次元尺度法(NMDS)による種組成の類似性と環境要因の相関検定、TWINSPANによる指標種解析による下層木群集の分類を実施した。さらに、下層木群集の主要3種を対象として、一般化線形モデル(GLM)により個体数分布に対する環境要因の影響を評価した。
毎木調査の結果、下層木群集の幹密度は6533幹/ha、胸高断面積合計は3.33 m2/haであり、43種が確認された。同地域の熱帯季節林と比較して密な下層構造であり、落葉フタバガキ林構成種であるDipterocarpus tuberculatus等が優占していた。NMDS解析の結果、上層木と下層木の種組成には差異が認められ、草本層ではササ類が優占していた。TWINSPAN解析により下層植生は4グループに分かれた。その種組成はササ類の被度と草本類の群度と関連があり、フタバガキ科のD. tuberculatusやノボタン科の数種などが指標種として抽出された。主要3種のGLM解析では、環境要因に対して異なる生存戦略を持ちつつも、共通して特定のサイズクラスの個体数が減少しており、過去の攪乱の影響が示唆された。
本調査地に成立する森林は落葉フタバガキ林に分類された。また、下層植生は不均一性が高く、草本層の被度・群度と関連があることが分かった。