| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-165 (Poster presentation)
萌芽は攪乱に対する植物の生活史戦略の一つであり,葉の機能形質とも関係している。先行研究では,耐陰性樹種は萌芽能力が低い傾向があることが示されており(Shibata et al. 2014),これらの樹種はLDMC(Leaf dry matter content),葉の厚さ,物理的強度が高い特徴を持つ。しかし,こうした関係が種間だけでなく,種内の個体差においても成立するかは明確ではない。本研究では種内における葉の機能形質と萌芽能力の関係性を解明するとともに,種間における萌芽能力と機能形質の関係性との違いを検証することを目的とした。
調査は新潟県のブナ林で行い,主要16樹種548個体を対象とした。2024,2025年6月に幹直径を計測後,根本から伐採した。伐採時に同個体の葉を採取し,LDMC,SLA(Specific Leaf Area),葉の厚さ,葉の物理的強度を計測した。同年10月に各株の萌芽の根本直径,高さを計測した。解析は萌芽の合計基底断面積,最大高を応答変数とし,幹直径より求めた株断面積,各機能形質,年度を説明変数としたGLMMを構築した。いずれも樹種をランダム効果に含めた。種間関係は,萌芽を株断面積から予測するGLMMに各樹種の平均株断面積を入力して得た樹種別予測値と,樹種平均形質の相関で評価した。
種内では萌芽の合計基底断面積に対してLDMC,葉の厚さの有意な正の影響,SLAの有意な負の影響が示され,高いLDMCや厚い葉などの陽葉形質を持つ個体ほど萌芽再生量が多い傾向が各樹種に共通してみられた。一方,種間では萌芽の合計基底断面積とLDMCの間で有意な強い負の相関が示され,LDMCの大きい耐陰性樹種ほど萌芽再生量が小さかった。以上の結果は,機能形質が萌芽能力に影響する仕組みが種内と種間で異なる可能性を示唆する。当日は種内,種間で萌芽能力と機能形質の関係性が逆転することについて議論する。