| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-166  (Poster presentation)

耕作放棄された水田の植生パターンが水生昆虫の多様性に及ぼす影響【A】
Effects of Abandoned Rice Field Vegetation Patterns on Aquatic Insect Diversity【A】

*渡辺晃史, 小路晋作(新潟大学)
*Koushi WATANABE, Shinsaku KOJI(Niigata Univ.)

水田の耕作放棄地は適切な管理により湿地生態系の復元に資する可能性があるが、放棄に伴う生物相の変化や管理手法の影響に関する知見は少ない。本研究では、放棄水田における植生の違いが水生昆虫の多様性に及ぼす影響に着目し、植生を低茎湿性・高茎湿性タイプに類別して、トンボ目、水生のコウチュウ目、カメムシ目の多様性に及ぼす影響を調べ、差異に関与する環境要因の抽出を試みた。新潟県見附市内の3つの谷を対象に、2025年5~11月に月1回の定期調査を行い、水生昆虫の掬い取り採集と環境条件の計測を行った。各分類群について、植生タイプ及び環境要因が種数、個体数および組成に及ぼす影響について解析した結果、(1)トンボの種数と個体数は水田より放棄地で多かったが、コウチュウ目、カメムシ目では環境間の差がなかった。放棄地では年間を通じて水域が形成され、生育期間の長いヤゴ類にとって好適であった一方、幼虫期間の短いコウチュウ目、カメムシ目にとっては湛水期間の違いが制約とならなかったためと考えられた。(2)コウチュウ目の種数、個体数と放棄地の水深との間に負の関連があり、個体数のみ植生タイプと負の相関がみられた。また、トンボ目の個体数を科/属に層別化して分析したところ、シオカラトンボ属以外のトンボ科の総個体数は水面面積と負の関連を、水深と正の関連を示した。さらに、カメムシ目の個体数を科/属に層別化して分析したところ、ミズムシ科は土質の粗さと植生タイプとの間に負の相関があり、コオイムシ属はリター量と植生タイプとの間に正の相関がみられた。このように、放棄地における水生昆虫群集は多様な環境から影響を受けており、分類群によって影響の受け方は異なっていた。以上より、放棄地における水生昆虫類の多様性の向上には、植生タイプや水深をはじめとする水環境の異質性の増大が重要と考えられた。


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