| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-168 (Poster presentation)
種子発芽には季節的な温度変化が重要であることが知られているが、実際の野外環境、特に植被の少ない先駆的環境では一日の間に存在する短期的な温度変化(変温)が顕著である。一部の植物は変温によって種子発芽が促進されることが報告されている。蛇紋岩地帯では斜面崩壊により、草本や低木を中心とした先駆的植生が維持されている場合が多く、それらが変温の影響を受けている可能性が考えられる。本研究では変温が蛇紋岩地帯の植生に影響を与えていると仮説を立て、蛇紋岩地帯に生育する植物の種子発芽に対する変温への反応性を解明することを目的とした。
本研究では広島県庄原市に位置する猫山の山頂付近に広がる蛇紋岩地帯(標高約1,100~1,180 m)に調査地を設けた。山頂の蛇紋岩露岩地には草本や低木、その周辺の草地には比較的背丈の高い草本や低木が優占している。2024年6月から一年間、蛇紋岩露岩地に温度ロガーを設置し昼夜の温度変化を調査した結果、昼夜間で地温が15℃以上変動することが確認された。
蛇紋岩露岩地とその周辺の草地に生育する12種を選定し、変温条件(25℃/15℃)と恒温条件(25℃)の2条件で発芽実験を行った。調べた植物種のうち9種類は変温と恒温の発芽率に有意な差は見られなかったが、メドハギ Lespedeza cuneata var. cuneataは変温条件で発芽が抑制された。一方、オカトラノオ Lysimachia clethroidesとコメガヤ Melica nutansでは変温条件で有意に発芽が促進された。特にコメガヤは恒温条件で全く発芽が見られず、変温に依存して発芽することが確認された。
以上の結果から、同じ生育地の植物でも変温に対する反応は大きく異なっていることが明らかになった。同じ気候帯・土壌であっても、微地形によって、変温の程度は変化する。したがって種ごとの変温への反応性によって、種組成や群落の構成は異なるものになると推察され、変温が種組成を多様化させるファクターとなりうることを示している。