| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-172 (Poster presentation)
種の共存メカニズムの解明は生態学の中心的課題である。近年、ニッチ差(他種よりも自種をどれだけ強く抑制するか)と適応度の比という2つの共存指標から2種の共存可能性を評価する理論的枠組みが発展し、実証研究が盛んに行われてきた。しかし、こうした共存指標の種間差が、必ずしも種間の形質の違いを反映していないことが指摘されてきた。その要因として、生息環境に応じて形質が変化する表現型可塑性を無視していることが挙げられている。
本研究では、同所的に分布する1年草4種を対象に、異なる密度条件下で競争実験を行い、各個体の高さ、葉の乾物含有率(LDMC)、SLA、根の最大長、植物体の縦横比(Canopy Shape)などを測定した。これらの形質データから、各個体と競争相手との形質差を算出し、近隣個体数と成長率の関係(密度効果)が、形質差によって説明されるのかを検証した。
その結果、競争相手との形質差は密度効果に影響することが明らかになった。LDMCでは、競争相手との形質差が大きい個体ほど密度効果が弱まる傾向がみられ、光資源獲得戦略の差異が競争緩和に寄与する可能性が示唆された。一方、Canopy Shapeでは、種内競争と種間競争で効果の方向が異なり、鉛直方向に伸長した個体ほど、種内では負の密度効果が弱まるのに対し、種間では逆に強まった。これは植物体の形態の可塑的変化が、種間競争に比べ種内競争をより緩和し、共存理論における安定化機構としてのニッチ差を縮小させる可能性を示す。これらの結果は、種の共存メカニズムを理解するうえで、表現型可塑性を考慮する必要性を示唆するものである。