| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-174  (Poster presentation)

乗鞍岳の高山植生における種・系統的多様性の環境応答 -GLORIAサイトの日本初設置-【A】
Environmental responses of species and phylogenetic diversity in alpine vegetation on Mt. Norikura -Establishing the first GLORIA site in Japan-【A】

*橋本駿輔(東京農業大学), 神山友良(東京農業大学), 中村幸人(東京農業大学), 尾鼻陽介(信州大学), 佐藤利幸(信州大学), 今井伸夫(東京農業大学)
*Shunsuke HASHIMOTO(TUA), Yuura KAMIYAMA(TUA), Yukito NAKAMURA(TUA), Yousuke OBANA(Shinshu University), Toshiyuki SATO(Shinshu University), Nobuo IMAI(TUA)

 高山植生は温暖化に最も脆弱な生態系の一つであり、特に標高幅が狭い山岳ではわずかな気温上昇でも消失の危険性が高い。高山植生は風雪傾度の影響も受け、風衝側では乾燥・凍結により植生発達が抑制され、風背側では積雪により雪田植生が発達する。近年、群集構造の理解には種数に加え系統的多様性が重要視されている。しかし、標高と風雪の両傾度に沿った系統的多様性の変化を検証した例はない。
 本研究は北アルプス乗鞍岳にGLORIAサイトを設置し、種・系統的多様性に及ぼす標高傾度と風雪傾度の相対的重要性を評価した。乗鞍岳の4山頂(2751、2871、2896、3014m)の頂点から、4方位へ5m下降した地点に3×3mプロットを設置し、各4隅の1×1mコドラートで出現種と被度を記録した(32種)。系統樹はV.PhyloMaker2で構築し、ses.MPD等を算出した。多様性の標高・方位に対する応答をGLMMで、種組成の変動をNMDS、PERMANOVA、Variation Partitioningで解析した。
 種数は標高に伴い減少し、方位も有意であった。NMDSでは標高による種組成の分離は明瞭だが、方位では重複した。一方、ses.MPDは方位に強く反応し、北斜面で負(近縁集中)、南・西で正(遠縁共存)を示した。風衝地性種の優占度が高いコドラートほどses.MPDが負に傾き、ツツジ科矮性低木の近縁集中が生じていた。Variation Partitioningでは、標高(Adj.R²=0.14)と風衝地性種の優占度(0.12)の説明力がほぼ同等、共有部分はゼロだった。このように、標高は種数を規定する広域的フィルターとして機能する一方、風雪環境は群集の系統的な組み立てを規定する局所的フィルターとして機能し、風衝側では近縁種の集中が、風背側では遠縁種が共存するという風雪傾度に沿った系統構造の分化が生じていた。


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